― 千年の歴史を持つ日本の伝統工芸品の美と匠をみるー
(現在作業中)
はじめに
漆工芸は、ウルシの木の樹液を塗料や接着剤として用い、木や竹などの器物に塗り重ねて装飾を施す伝統工芸の一つで、高品質な工芸品は“Japan”とも呼ばれ、代表的な日本の工芸品となっている。漆は古い時代より堅牢性、耐久性や加飾のしやすさにから日常使われる食器や重箱などの漆器から、建物や仏像、芸術品に至るまで広く用いられてきた歴史がある。また、漆器は、素地、塗り、加飾といった工程で作られる長い時間をかけて漆工芸で、特に美しい蒔絵、螺鈿、沈金などは非常に価値の高い美術品として取り扱いされている。漆工芸は地場の伝統産業として各地で発達してきており、北の津軽塗から、漆液産地で作られる浄法寺塗、輪島塗、鎌倉時代に起源を持つ鎌倉彫、華やかな加賀蒔絵が有名な金沢漆器、木目の美しい飛騨春慶塗、伝統的な美術蒔絵が風格ある京漆器、良質な漆の越前漆器などが特に有名である。
ここでは、これら各地の漆工芸を前提にしつつ、日本の代表的な漆工芸に関する博物館・美術館などを紹介してみようと思う。
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♣ 蒔絵博物館(インターネットミュージアム)
HP: https://makie-museum.com/index.html
→ インターネットで作品を紹介するバーチャル博物館。漆工芸の研究者高尾曜が開設したミュージアムであり、ウェッブ上に蒔絵概説史、蒔絵師の伝記、蒔絵作品の展示、用語集などを載せていて漆工芸・蒔絵の総合解説集となっている。展示では、漆工芸が最も盛んだった江戸時代を中心に、蒔絵の名工達の事歴と作品群が紹介されており、その産地を含めてそれぞれの特徴をよくとらえている。
このうち蒔絵概略史は、時代別の作者と作品解説がなされており、蒔絵発達の歴史をみるには非常に役立つ資料となっている。これによれば、安土・桃山時代に秀吉など天下人の好みでより派手な蒔絵が好まれ寺社などの建築に豪壮華麗な蒔絵が施されたこと、江戸時代初期には江戸城本丸に御細工所も創設され、金沢でも加賀前田家で加賀蒔絵の礎が築かれたこと、江戸中期には尾形光琳や山本春正が活躍したこと、後期には 将軍や家族の道具類、子女の婚礼調度に蒔絵が多く用いられて古満寛哉や 原羊遊斎など名工が生まれたこと、幕末には中山胡民や 柴田是真、 京都では山本利兵衛や 佐野長寛などが活躍したこと、明治になると工芸品は外貨獲得の有効な手段と位置づけられて蒔絵は重要な輸出品目と位置づけられ、また、 蒔絵師も万国博覧会や 内国勧業博覧会向けの作品を作るようになり輸出商社もできてくる。明治23年には「日本漆工会」も設立され展覧会も開催されるようになる。この期には、東京では池田泰真、川之邊一朝、植松抱民、京都では山本光利、富田幸七などが名工として知られるようになったという。
これら漆工芸と蒔絵の歴史と作者の紹介がなされているのは、この蒔絵博物館ならではの特色といえるだろう。
See: 蒔絵博物館/蒔絵概略史https://makie-museum.com/history.html
See: 蒔絵博物館/蒔絵師伝記https://makie-museum.com/makieshi.html
See: 蒔絵博物館/作品展示室https://makie-museum.com/sakuhin.html
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♣ 石川県輪島漆芸美術館
所在地:石川県輪島市水守町四十苅11番地 Tel.0768-22-9788
HP: https://www.art.city.wajima.ishikawa.jp/about
→ 輪島漆芸美術館は日本を代表する伝統工芸「輪島塗」漆芸専門の美術館。輪島市と輪島漆器商工業協同組合が運営主体となり1991年に開設された。漆芸品及び漆文化に関する調査研究、資料収集、保管展示を行って総合的な漆文化の発信を目指している。館内の常設展では「輪島塗の技と歴史」をテーマに、近世から現代にいたる歴史的な輪島塗作品が展示しており、輪島塗の技と歴史が製作道具や映像でわかりやすく紹介されている。また、人間国宝など著名な漆芸作家の漆工芸品、日本と世界の各種漆器なども身近にみることができる。
ちなみに、輪島塗は能登半島の輪島地域で生産される伝統工芸漆器を指し、特色としては、木地に生漆と米糊を混ぜた布を貼って補強(布着せ)、焼成珪藻土を混ぜた下地を何層にも施した「丈夫さ」に重きをおいた漆器とされる。起源については、室町時代に根来寺の僧が伝えたという説、戦国時代に豊臣秀吉の兵火より逃れた根来寺の僧が伝えたという説など様々な説がある。しかし、それ以前にも、能登半島の「三引遺跡」(七尾市)から6800年前の漆製品が発見されており、輪島では平安時代の遺構である「屋谷B遺跡」でも漆製品が発掘された記録がある。また、輪島市河井町の重蔵神社旧本殿の朱塗扉(室町時代の1524年作)が現存する最古の輪島塗のものとされている。
現在のような輪島塗の技術が確立したのは江戸時代前期の寛文年間(1630年頃)と伝えられている。さらに、江戸時代の中期にかけて、現在の工程とほとんど同様の工程となり、広く普及して日常用品として使われるようになった。
明治になると、輪島塗は国内勧業博覧会などで地産品として広く紹介され、輸出品としても珍重された。また、国内市場では、堅牢な実用品として椀や箸、装飾箱など用いられていることが多くなる。そして、輪島塗は、1975年に国の伝統工芸品指定を受けると芸術的な意味合いも付加されるようになり、現在では、優美で少し高級志向のある漆工芸品として市場価値を高める傾向にある。しかし、2024年1月に発生した能登半島地震により、工房や店舗が大きな被害を受け、生産の再開が困難となっている。また、輪島朝市周辺の火災により、12の事業所が焼失し材料や道具を失った事業者が多くなっている。当漆芸美術館も大きな被害を受けた。
・参照:石川県輪島漆芸美術館 – Wikipedia
・参照:日本の漆器 – Wikipedia
・参照:輪島塗の特徴 や歴史(KOGEI JAPAN)https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/wajimanuri/
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♣ 輪島塗会館
所在地:石川県輪島市河井町24-55 Tel. 0768-22-2155
HP: https://wajimanuri.or.jp/
→ 輪島塗会館は、輪島漆器商工業協同組合が運営する輪島塗の文化施設。1階には市内約60店舗の漆器店の販売・修理相談コーナー、2階は展示室で、国の有形民俗文化財を含む約3,800点の貴重な漆芸品資料が展示されている。ここでは、輪島塗の製造工程を製作用具と共に紹介しているほか、国指定重要有形文化財に指定された貴重な輪島塗作品を見ることができる。ちなみに、輪島漆器商工業協同組合は、1944年に設立された県輪島市の伝統工芸「輪島塗」の製造・販売を支える中核組織で、輪島塗の技術継承や品質基準の維持、共同施設の運営、産地全体の振興活動を行っている。現在は能登半島地震による甚大な被害を乗り越え、工房や組合施設の復旧・再建を進めながら、職人たちのものづくりの基盤を守る活動を継続している。同組合の運勢する輪島塗会館も、現在地震の影響で閉鎖しているものの2026年夏以降の再開を目指して準備を進めているという。
輪島塗は100以上の工程を経て作られる非常に堅牢で美しい漆器。その歴史は古く、15世紀の室町時代にはすでに塗師が存在していたことが確認されている。木地の補強に布を貼り(布着せ)、珪藻土を焼いた「輪島地の粉」を下地に何度も塗り重ねることで、傷に強く、修理を繰り返しながら長く使い続けられるのが特徴とされる。
・参照:輪島塗の世界を体感できる「輪島塗会館」(Discover Noto)https://discover-noto.com/2953/
・参照:輪島塗――見る、さわる、つくる!「漆の首都」で「用の美」の神髄を体感する | 経済産業省 METI Journal ONLINE https://journal.meti.go.jp/fudoki/45442/
・参照:輪島漆器商工業協同組合 https://wajimanuri.or.jp/kumiai/file07/rekishi2.html
・参照:輪島塗とは。独自の技術と文化を築いた「塗師屋」の存在 | 中川政七商店の読みものhttps://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/116834
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♣ 山中漆器伝統産業会館(山中うるし座)
所在地:石川県加賀市山中温泉塚谷町イ270 Tel. 0761-78-1696
HP: https://www.yamanakashikki.com/article/3321
→ 山中漆器は、石川県加賀市の山中温泉地区周辺で作られる漆の伝統工芸品(山中塗)を指す。漆器では全国一の生産高を誇り、「木地の山中」と称されるほど高度な木工挽物(ひきもの)技術が特色で、これを活かした木目の美しさと堅牢さが特徴として知られる。産業会館では、この山中漆器の歴史を示す作品から現代の漆伝統工芸品までを広く展示するほか、山中漆器の日用食器、アクセサリー、茶道具などを現地販売している。また、隣接する山中漆器産業技術センターでは木地挽物工房で山中漆器の製作工程を見学や体験ができる。
山中漆器の始まりはおよそ400年前(安土桃山時代)。山々を渡り歩き、挽物の器をつくって生活していた「木地師」の一団が山中温泉上流の真砂に定住して“木地を挽き”はじめた頃から始まったといわれている。木地師は次第にふもとの温泉客を中心に販売するようになり、塗りや蒔絵の技術を会津や京都や金沢から取り入れながら普段使いの器の産地として成長してきた。 漆器は基本的に木地師が木を挽き、塗師が漆を塗ってできるが、山中漆器は挽物木地の木目をいかした拭漆椀を得意としているようだ。
・参照:山中漆器の歴史 (石川県立山中漆器産業技術センター) https://yamanaka696.org/history/
・参照:山中漆器の特徴 や歴史(KOGEI JAPAN)https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/yamanakashikki/
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♣ 石川県立山中漆器産業技術センター
所在地:石川県加賀市山中温泉塚谷町イ270 Tel. 0761-78-1696
HP: https://yamanaka696.org/
→ この山中漆器産業技術センターは、加賀市山中温泉にある全国で唯一の「挽物轆轤技術」と「漆芸技術」を専門的に学べる研修施設。山中漆器の伝統的な木地挽き技術の習得と、将来の産業を担う人材育成や後継者育成を目的として1997年に設立された。2018年からは、若手木地師の自立開業を支援する「レンタル工房」を開設し、山中漆器のさらなる発展・振興を図っている。2階はギャラリー・展示エリアとなっており、挽物木地産地山中の特徴である「薄挽き」や、木地に様々な模様をつける山中独自の高度な技「加飾挽き」の伝統技術を駆使したものから、近代的なデザインや機能を備えたものまで並んで展示されている。同センターでは挽物轆轤技術研修所を設けて毎年研修生を募集して儀受つん伝承を図っている。また、例年11月上旬に「JAPAN 漆 YAMANAKA」の木地部門の回顧展を開催し、木地・上絵・蒔絵の3つの部会に分かれた作品の展示販売や、職人たちによる新作展示が行われている。
・参照:職人のまち加賀 (山中漆器)https://kagaworld.or.jp/kagashikougei-ouen-project/
・参照:石川県立山中漆器産業技術センター|(石川県の観光/旅行サイト「ほっと石川旅ねっと」)https://www.hot-ishikawa.jp/spot/detail_4643.html
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♣ 会津うるし美術博物館
所在地:福島県喜多方市東町4095 Tel. 0241-24-4151
HP: http://www.kuranomachi.com/urushi/
→「会津塗」は、福島県会津地方で作られている漆器で、製造工程によってお椀などの丸物とお盆・文庫などの板物に分類され、松竹梅と破魔矢を組み合わせた模様は会津絵と呼ばれて珍重されている。特徴は、縁起の良い意匠や多彩な加飾の美しさとされ、他産地の漆器より溝を細かく浅く彫ることで柔らかな表情を感じられる漆器となっている。江戸時代では黒・朱・青光(緑)の色が多く使われていたが、近代になると赤茶のうるみやオレンジ色の洗朱(あらいしゅ)も用いられるようになり、限られた色数の中から考案された配色も見所となっている。 「会津うるし美術博物館」は、こういった特色を持つ会津漆器に特化して、その歴史や作品を展示する漆美術館と位置づけられている。また、美術館の建物は、かつて県内随一の大地主であった風間善九郎の総漆塗りの離れ座敷を再生して作られた歴史建造物となっており貴重である。屋敷の蔵の中に漆器の歴史資料、塗道具、漆の精製道具類などが展示され、工程がよくわかる構成となっている。館内には、漆師・田中亨が一生をかけて制作したという「乾漆」の壺や椀、未完の大作といわれる乾漆大花瓶など貴重な会津うるし作品が展示されているのを見ることができる。
ちなみに、会津塗の歴史は、1590年、戦国武将蒲生氏郷が会津に入封したときに始まったといわれている。氏郷は、近江日野町から木地師と塗師を招き、最先端の塗り技術を伝授させたことにより大きく発展。その結果、江戸に近いこともあり、漆の木の栽培から加飾まで、作業を一貫して手がける一大産地となった。江戸時代には歴代藩主によって保護奨励され、技術革新も進み、幕末には外国に輸出されるほどになっている。幕末の戊辰戦争で戦禍に巻き込まれ、壊滅的な打撃を受けたが、その後の復興により、明治時代中期には日本有数の漆器産地として再び活気を取り戻している。
・参照:うるし美術博物館 (ニッポン旅マガジン) https://tabi-mag.jp/hs0030/
会津塗(あいづぬり)の特徴 や歴史- KOGEI JAPAN(コウゲイジャパン)https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/aizunuri/
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♣ うるしの里会館(鯖江市越前漆器伝統産業会館)
所在地:福井県鯖江市西袋町37-6-1 Tel. 0778-65-2727
HP: https://www.echizen.or.jp/urushinosatokaikan
→ 越前漆器は、古くから福井県鯖江市河和田地区及び周辺地域でつくられてきた工芸漆器で、漆を塗り重ねることで艶やかな塗り肌が増し軽さと丈夫さも兼ね備えていることが特徴とされる。この「うるしの里会館」では、木地から加飾まで漆器の製造工程や歴史的資料等が展示されており、館内にある特設展示場では貴重な越前塗りの漆芸品・漆器を見学できる。また、越前漆器特有のとりくみである業務用漆器の製造や食器洗浄機対応の漆器作りなどの技術についても詳しく知ることができる。越前漆器伝統産業会館は、元々は越前漆器協同組合が1980年に開設した施設であったが、2005年に改築され、新しく“うるしの里会館”となり、事務所、ミュージアムショップ、産業振興ホールなどを併設し越前漆器のPR拠点となった。また、会館に隣接する職人工房では、伝統工芸士による実演が行われており、作業風景を眼前で見学することができる。展示物の中では、漆塗りの「越前塗山車」が特に有名で、これを館内の「山車会館コーナー」で身近に見ることができる。
<越前漆器の歴史>
越前漆器の歴史は、約1500年前の古墳時代の末期まで遡るといわれる。伝説によれば、まだ皇子であった継体天皇が越前国河和田に来られた折、片山集落(現在の鯖江市片山町)の塗り師が黒塗りの「三ツ組椀」を皇子に献上したことがはじめとされる。皇子はその出来栄えに感動して片山集落を漆と漆器の産地として奨励したという。それ以降、当地では米を年貢(税)として納めていた時代にも、越前漆は税として納めることが認められその生産が振興された。室町時代に入ると、当時、布教が盛んであった浄土真宗において、「報恩講」の仏事に漆椀が用いられ、越前漆器の普及のきっかけになったとされる。日光東照宮の造営の際に、漆掻き職人として越前国の職人の記載がみえるという。また、江戸時代になると越前は漆掻きの存在と仏事が盛んな風土であったことから、国内漆器一大産地となって成長していく。この地の漆掻き職人は、漆の木に掻き傷をつけながら漆の液を集める技術をもち、最盛期には国内の半数の漆掻きを越前衆が担っていたとの記録がある。また、越前漆には次第に「蒔絵(まきえ)」や「沈金(ちんきん)」の技法が伝わり、堅牢さに華やかな装飾を加わり、明治時代以降には、祝儀用調度、菓子器、弁当や重箱、茶道具などから、日常的に使用する箸、汁椀まで多種多様な器が生産されるようになっている。現在では、国内の外食産業用、業務用の漆器の80%以上が越前漆器で生産されているという。
・参照:越前漆器協同組合 | うるしの里会館 https://www.echizen.or.jp/urushinosatokaikan
・参照:越前塗山車 https://www.echizen.or.jp/echizennuridashi
・参照:越前漆器(えちぜんしっき)の特徴 や歴史( KOGEI JAPAN)https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/echizenshikki/
・参照:越前漆器(中川政七商店の読みもの)https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/122213
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♣ 紀州漆器伝統産業会館「うるわし館」
所在地:和歌山県海南市船尾222
HP: https://www.kishusikki.com/03_kaikan.html
→ 紀州漆器は、和歌山県海南市の北西部にある黒江地区を中心に作られている漆器で「黒江塗り」とも呼ばれ、福島県の「会津塗」、石川県の「山中塗」や「輪島塗」とならび、日本における「三大漆器」のひとつに数えられる。特徴は、シンプルで丈夫、日常生活で気軽に使える実用的なところにあるという。江戸時代から庶民の日用品として親しまれてきている漆工芸品として知られていた。この「うるわし館」は、紀州漆器協同組合館によって運営されており、漆器づくりの道具や資料、作品類数多く展示され、紀州漆器づくりの工程や、歴史を詳しく知ることができる。
紀州漆器は、室町時代に紀州の「木地師」によって、渋地椀が作られたのが始まりとされる。1585年、豊臣秀吉による根来寺攻めにより漆器を作っていた僧たちが難を逃れて黒江に来たことから漆器づくりが広まったといわれている。江戸時代になると紀州藩の奨励で日用品としての紀州漆器が大いに発展。これに加えて、僧侶たちが寺で使用する膳・椀・盆・厨子などを自ら作った実用的な「根来塗」も紀州漆器に影響を与えた。その後、1826年(文政9年)に膳などの堅地板物の製作に成功、安政時代には蒔絵による装飾がほどこされるようになる。明治維新による海外貿易の開始は紀州漆器にも活気を与え発展。1879年(明治12年)には沈金の装飾技術を導入、1898年には京都より蒔絵師を招いて蒔絵の改良が図られ更に発展する。昭和時代になると天道塗・シルク塗・錦光塗などの変り塗も考案され、紀州漆器は革新的な漆工芸品として市場で人気が高い漆器である。
・参照:紀州漆器の特徴 や歴史-(KOGEI JAPAN)https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/kishushikki/
・参照:「紀州漆器」とは( 中川政七商店の読みもの) https://story.nakagawa-masashichi.jp/craft_post/122383
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♣ 鎌倉彫工芸館(伝統鎌倉彫事業協同組合)
所在地:神奈川県鎌倉市由比ガ浜3-4-7 TEL (0467) 23-0154
HP: https://www.kamakurabori-kougeikan.jp/
→ 鎌倉彫は、鎌倉市及びその周辺地域で作られる漆器を指し、カツラやイチョウなどの原木を用いて木地を成形した後文様を彫り、その上に漆を塗って仕上げた漆工芸品。この鎌倉彫の技法と作品を広く普及するため作られたのが「鎌倉彫工芸館」である。1978年に結成された「伝統鎌倉彫事業協同組合」によって運営されており、現在、鎌倉彫の販売、鎌倉彫のオーダー製作、漆塗り加工の依頼、材料販売や展示会、講習会、体験教室などを行っている。
館内には15〜20名の作家による多様な作品が展示されており、丸盆や皿、ブローチ、ボールペンなど、日常に溶け込む美しい工芸品がそろっている。彫刻や漆塗りなどの工程は職人による手作業で行われており、機械加工と手仕事が融合した日本独自の匠美を感じさせる。また、鎌倉彫工芸館商品ギャラリー・資材コーナーでは、木地材や彫刻刀、漆などの資材も販売され専門的なニーズにも応えている。鎌倉彫は1979年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定されている。
・参照:鎌倉彫工芸館|800年の漆彫り体験・15〜20名の作家作品展示と販売https://kamakuraguide.com/kamakura-nishiguchi/kamakura-bori-museum/
・参照:小園敏樹「身につけて楽しい鎌倉彫」展 (鎌倉彫職人日記 鎌倉彫工芸館) http://kamakura87.blog110.fc2.com/blog-entry-598.html
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♣ 東京国立博物館 漆工芸展示室
所在地:東京都台東区上野公園13-9 東京国立博物館本館 12室
HP: https://www.tnm.jp/
→ 東京国立博物館の本館1階には、日本で独自に発展した漆芸の歴史をたどる常設の「漆工コーナー」がある。ここでは、国宝や重要文化財を含む、平安時代から江戸時代にかけての華やかな蒔絵や螺鈿の名品が常時展示され、繊細で美しい技法を間近で鑑賞できる。展示の見どころは、漆で絵を描いて金銀粉を蒔く「蒔絵」、貝殻をはめ込む「螺鈿(らでん)」、彫刻を施す「彫漆(ちょうしつ)」など、多彩な漆芸技法による作品がそろっている点にある。平安時代の王朝文化を伝える優美な調度品から、室町時代の唐物風作品、安土桃山時代の豪華な作例、江戸時代の精緻な作品まで、時代ごとの変遷をたどりながら鑑賞できる。また、漆工芸製作の工程や作法の示す解説パネルも展示されており参考になる。
展示品の中には、企画展や特別展で、国宝の本阿弥光悦作「舟橋蒔絵硯箱」や尾形光琳作「八橋蒔絵螺鈿硯箱」などの教科書で有名な至宝が随時展示されている。
・参照:東京国立博物館 – 展示・催し物 展示 本館(日本ギャラリー) 漆工 作品リストhttps://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=3179
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♣ 国立工芸館(金沢)
所在地:石川県金沢市出羽町3-2 Tel. 050-5541-8600
HP: https://www.momat.go.jp/craft-museum/
→ 国立工芸館は1977年、東京国立近代美術館工芸館として東京・北の丸公園に開館されたものだが、2020年に石川県金沢市に移転して新装開館されている。金沢の工芸館では、明治期に建てられた国登録有形文化財の旧陸軍施設を利用して、前施設の活動を継承し、近現代工芸・デザイン専門の美術館。陶磁、ガラス、漆工、木工、竹工、染織、人形、金工、工業デザイン、グラフィック・デザインなどの各分野にわたって収集、保存、調査・研究・展示を行っている。
漆工芸に関係する展示としては、明治以降今日までの有名作家の漆工品約400点が収蔵されており、中でも金沢出身の漆芸家松田権六の作品のほか、同氏の「工房」が再現されており、氏が実際に制作で使った道具や素材類、関連資料を見ることができる。また、六角紫水(彫漆)、高野松山(蒔絵)、大場松魚(蒔絵)、増村益城(髹漆)寺井直次(蒔絵)など、日本工芸会を牽引した作家たちの繊細で高度な技法が用いられた工芸品が定期的に展示されている。
ちなみに、金沢に生まれた松田権六は、近代漆芸に偉大な貢献をなした人間国宝作家として知られる。松田は加賀蒔絵の伝統を踏まえつつ、正木直彦東京美術学校長や大茶人益田孝(鈍翁)との知遇、室町や桃山時代などの古典研究、朝鮮・楽浪漢墓出土の漆器や中尊寺金色堂をはじめとする数々の保存修復をとおして、漆芸の意匠や様式、広範な技法を鋭い洞察と鑑識とで解明し、自らの創作に応用、発展させている。作品としては、「蒔絵螺鈿有職文飾箱」(1960)、「蒔絵竹林文箱」(1965)「蒔絵槇に四十雀模様二段卓」(1972)などがある。
・参照:松田権六の仕事場 関連資料展示解説 – 国立工芸館 https://www.momat.go.jp/craft-museum/architecture/shigotobacase
・参照:人間国宝 松田権六の世界 – 国立工芸館 https://www.momat.go.jp/craft-museum/exhibitions/436
・参照:石川県ゆかりの作家が彩る ― 国立工芸館「工芸と天気展」(読者レポート) | レポート | アイエム[インターネットミュージアム]https://www.museum.or.jp/report/124016
・参照:国立工芸館が金沢に開館。「日本の工芸を世界に発信」|美術手帖https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/22934
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♣ 小西美術工藝社付属「うるしデジタル博物館」
所在地:東京都港区芝4-4-5 三田KMビル3F TEL. 03(5765)1481
HP: https://www.konishi-da.jp/museum/
→ 「うるし博物館」は、日光東照宮や輪王寺の漆塗り・極彩色を手がけてきた小西美術工藝社が運営する博物館。伊勢神宮の御神宝の試作品や、中尊寺金色堂の修復関連資料、古くからの貴重な漆芸品を展示している。工藝社に代々伝わってきた漆芸品や海外に散った貴重な品々約1000点を収集・所蔵している。同社は、日本の漆文化を受け継いできた集団の一つとして、世界中どこでも見られるように「デジタル博物館」を立ち上げている。ここでは、物理的には見られない品々の内部や裏側なども見られるよう3D技術を使った展示も行っている。今後も、所蔵品のデジタル展示を増やしていく予定という。
・参照:3D一覧 | 小西美術工藝社 https://www.konishi-da.jp/museum/3d/
・参照:所蔵品一覧 | 小西美術工藝社 https://www.konishi-da.jp/museum/collection/
・参照:小西美術の紹介 | 小西美術工藝社 https://www.konishi-da.jp/history/
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♣ 小田原漆器工房(大川木工所)(まちかど博物館)
所在地:神奈川県小田原市南板橋2-226-2 0465-22-4630
HP: http://okawa-mokkoujo.com/index.html
→ 小田原漆器はケヤキ材などが持つ自然の木目の美しさを充分生かした摺り漆塗りや木地呂塗りが主体の手作り漆器。この起源は室町時代中期に箱根山系の豊富な木材を使用し、木地挽きされた器物に漆を塗ったのが始まりとされている。その後、北条氏康が小田原漆器を発展させるため塗師を城下に招き彩漆塗りの技法も用いるようになり発展した。江戸時代には盆、椀などの日用品の他に武具類にも漆を塗るようになり、江戸時代中期には継続的に実用漆器として江戸へ出荷するなど、箱根関所を要する東海道屈指の城下町、宿場町に漆器つくりの技術が確立された。小田原漆器はケヤキ材などが持つ自然の木目の美しさを充分生かした摺り漆塗りや木地呂塗りが主体の手作り漆器で、堅牢で素朴な手工芸品として愛用されている。小田原漆器は1984年5月、通商産業大臣より「伝統工芸品」に指定されている。
・参照:大川木工所 神奈川県 小田原市 漆器 伝統工芸 引き出物 http://okawa-mokkoujo.com/index.html
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♣ 漆工博物館(安宅漆工店)(墨田・小さな博物館)
所在地:墨田区向島三丁目38番10号
HP: https://atakashikkouten.wixsite.com/home
→ 京都墨田区で長年、漆塗りを行っている安宅漆工店の資料館。この漆工博物館では、江戸時代から現代までの漆塗りの品々、製作道具、材料、製作工程やこれまで手掛けた修理・修復の写真などを展示している。館内は、壁を木地呂漆塗りで施された落ち着いた空間を醸し出す。塗師である安宅漆工店の安宅信太郎氏は「すみだマイスター」。15歳で父、儀一氏に師事。信州の善光寺や国立能楽堂、参議院議長公邸など、数多くの建造物の、建築漆工を手がけてきている。安宅郎氏は「漆本来の深みのある艶や優雅さを作り出し、これからも古き伝統を新しき時代に生かすとの思いで和・洋の世界に漆塗りの良さを伝えていく」としている。
・参照:伝統工芸・職人工房(墨田区観光協会・本物が生きる街 すみだ観光サイト) https://visit-sumida.jp/ctg_spot/play_spot10/
・参照:安宅漆工店(東京手仕事(TOKYO Teshigoto) https://tokyoteshigoto.tokyo/studio/atakashikkouten.html
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♣ 蒔絵工房 NAMIKI(パイロット)
所在地:神奈川県平塚市西八幡1-4-3 Tel. 0463-35-7069
HP: https://www.pilot.co.jp/service/koubou_namiki/
→ パイロットは、1926年から、日本が世界に誇る漆芸品のひとつ蒔絵を施した高級万年筆を欧米に展開してきているが、後に人間国宝となる蒔絵師・松田権六氏を中心とした蒔絵師グループ「國光會」を結成し、およそ100年にわたり日本古来の技を研究・発展させ匠の技で蒔絵万年筆を製作してきている。この成果を紹介するため開設した資料館がこの「蒔絵工房」。館内展示室では、大正期からの蒔絵万年筆、蒔絵箱、蒔絵額などの漆芸品、歴代ポスターなど約100点を展示している。かつて海軍火薬廠として使用されていた煉瓦造りの建物を改装した工房では、現在でも蒔絵万年筆を製作しているという。
・参照:大人の社会見学、「蒔絵工房 NAMIKI」に行ってきました!( レアリア)https://rarea.events/event/35380
・参照:蒔絵工房NAMIKI | PILOT https://www.pilot.co.jp/service/koubou_namiki/
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(了)