―時代と共に歩む記録の媒体、文具の歴史と役割―
はじめに

文房具は昔も今も変わらず日常的に使っている道具であるにもかかわらず、その歴史や役割について深く考えることは少ないようだ。また、ワープロやPCが普及した90年代から文字を「書く」から「打つ」に変わりつつある中、「もの」を「書いて」文字や絵に親しむ文化が薄れてきているような気がする。しかし、人は古くからさまざまな道具を使い「書く」ことで人間関係を築き生活文化を豊かにしてきた歴史がある。また、書く道具、文具も時代と共に変化し多彩なものになっている。今まで、各地の産業博物館を訪ねる中で、これら文具、文房具の社会的役割の重要性について考えることが多かったが、今回、改めて、日本にある文具メーカー、博物館、資料館を紹介してみることにした。この機会に、社会生活のかたわらにあり、日常的にも使われることの多い文房具について考えて欲しい。
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♣ 日本文具資料館(日本文具財団) )
所在地:東京都台東区柳橋1-1-15 Tel. 03-3861-4905
HP: https://www.nihon-bungu-shiryoukan.com/


→ この資料館は日本文具財団によって1980年代に設立された文房具の総合博物館。小規模な施設ながら、筆記用具を中心に内外の貴重な歴史的文具を収集展示している。館内には、筆記具類や印刷用具、印章、計算機、その他貴重な古今の文房具が豊富に展示されている。歴史的な筆、硯、真美、万年筆、そろばん、ペーパーナイフ、インク類など珍しい文具がみられる。筆記用具をみると、先史時代の楔形粘土板、スタイラスといわれる古代のペン、中世の羽根ペン、鉛筆の原形となった黒鉛筆記具などの歴史的な用具類が年代毎に丁寧に展示してある。珍しい展示では伊達政宗、徳川家康所蔵であったという日本にはじめて伝わった「鉛筆」(いずれもレプリカ)など。また、中国や日本で古くから使われていた毛筆や硯のコレクション、鉛筆の形態の変化や発展を伝える解説展示、インクペンや万年筆の進化、新しい筆記用具としてのフエルトペン、ボールペンなどの誕生・発展を示す展示など。いずれも見学者の興味を誘う内容の展示である。









筆記用具のほか、タイプライターや計算用具の変遷を示す展示も充実している。そろばんから手動・電動の計算機、電卓、タイプライターでは手動式から電動へ、そしてワープロ、PCへの進化などの文具技術の発展が展示を見る中で実感できる。また、独自の文字盤を備えた和文タイプライターの開発もユニークである。このほか、特別展示の「漢倭奴国王の金印」、ぺんてる社が開発した字を書く「ロボット」のデモンストレーション展示も興味深い内容。
上記のほか、珍しい展示品としては次のようなものがある。中国の古硯「端渓眼入大硯」、江戸時代の「矢立て」、世界のペ-パーナイフ、アンティークな万年筆類、長さ170センチの馬毛大筆、大正時代の金銭整理機、昭和40年代の手回し式計算機、カシオリレー式計算機など。
参考資料:
- 「コレクションから見る文具・人・文化」(日本文具資料館刊)
- 日本文具資料館案内パンフレット
- 鉛筆の歴史―文具豆知識― クボタ文具店http://kubobun.com/mame/pencil.htm
- 日本文具資料館HP http://www.nihon-bungu-shiryoukan.com/02.html
- 日本文具資料館 展示品一覧
- 筆記具の歴史 http://pastport.jp/user/hiroki0917/筆記具の歴史
- 万年筆の歴史(日本筆記具工業会)http://www.jwima.org/mannehitsu_web/01rekishi/rekishi_nenphou.html
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♣ 大阪文紙会館 歴史史料館(財団法人)
所在地:大阪市中央区安堂寺町2-4-14 06-6764-6767
HP: https://www.bunshikaikan.or.jp/bk/shiryoushitsu.php


→ 大阪文具倶楽部を前身とする大阪文紙会館にある歴史資料館。協会の各社や関係者などから寄贈された文具・紙製品・事務器など歴史的な品々を展示している。展示品としては、ペン先(ライオンペン5色ケース入り)、早川式繰出鉛筆、油煙墨、筆記用インク(アベックインキ)、穴開けパンチ(2穴、1穴リムーバー付)算盤、卓上式電卓、プリントゴッコ、ZAULUS(ザウルス)、洋式帳簿(復刻版)などがみられる。



・参考:大阪文具事務用品協同組合 http://www.osaka-bunkyo.jp/bunguhaku.html
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♣ 紙の博物館
所在地:東京都北区王子 1-1-3 TEL 03-3916-2320 /
HP: https://papermuseum.jp/ja/


→ 紙に関する多様な役割、歴史、製造技術に関する総合的な情報を提供する博物館。館では、世界と日本の「紙」の歴史とその社会文化的なインパクト、独自の発展を遂げた「和紙」の歴史や製法、近年の製紙産業の成立と発展の歴史、現代の紙の形態や役割などを詳しく紹介している。当初、明治初期の製紙会社「抄紙会社」(後の王子製紙)の歴史史料を展示する「製紙記念館」であったが、1998年、施設の大幅な拡張整備を行い現在の「紙の博物館」となった。



広く使われる印刷紙、新聞紙、包装紙のほか、書道用紙、折り紙、各種の和紙工芸作品、そして、紙の絶縁性と吸液性に着目した電子機器の基板「積層板原紙」など、“紙“が現代社会で広く使われていることが博物館展示でわかる。
・参考:紙の歴史・紙の基礎知識(⽵尾 TAKEO)http://www.takeo.co.jp/finder/paperhistory/
・参考:紙の歴史と製紙産業のあゆみ(紙の博物館編)
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<ノートと文房具>
♣ コクヨのショールーム「THE CAMPUS」と「KOKUYODOORS」

・「THE CAMPUS」
所在地:東京都港区港南1丁目8−35 コクヨ東京品川オフィス
HP: https://the-campus.net/ (「THE CAMPUS」)
・「KOKUYODOORS」
所在地東京都大田区羽田空港2丁目7-1 羽田エアポートガーデン2F
HP: https://www.kokuyo.co.jp/kokuyodoors/


→ コクヨは、文房具やオフィス家具、事務機器を製造・販売する大手事務機器メーカー。 このコクヨの「THE CAMPUS」はコクヨのショールームで、コクヨ製品の展示や体験ができる空間を銘打っている。自社ビルをリニューアルし2021年に開設。誰でも利用できるというパブリックエリアも併設されている。 また、KOKUYODOORS」は「コクヨ」の販売直営店で、コクヨの文具製品を一堂に展示し、日本の魅力ある文房具を世界に発信し、直販することを目的として羽田空港内に開設したもの。 ここでは、コクヨのショールーム(Webを含む)で紹介されている文具類とコクヨの創業から現在至る企業発展を紹介する。文房具の体験コーナーがあるほか、オリジナルギフト文具セット(ノート、クリップ、テープなど)、はさみセットなどがある。



なお、コクヨは文具の総合メーカーであるが、得意分野は、創業以来、ノート類、ファイル、帳簿、野帳、便箋など用紙・整理用品類が多いようだ。特に、コクヨのキャンパスノートは、1950年代の発売以来のミリオンセラーとなっている。
<コクヨの創業と商品開発の歴史>



→ コクヨの創業は、明治38年、黒田善太郎が大阪で和式帳簿の表紙店を開業したのが始まりとされる。当初は、表紙だけの製造請負であったが、後に帳簿と表紙の一貫生産へと事業を広げている。ちなみに、コクヨという社名の由来は、黒田が、郷里の富山(越中)の“誉れ”となるようにという思いから、「国誉」(コクヨ)としたことによるという。時代が移り、明治から大正になると会計方式も和式から洋式帳簿に時代が変わる中で、黒田は洋式帳簿の販売を開始。さらに1910年代以降は伝票、仕切書、複写簿、便箋などの製造にも着手、紙製品メーカーとしての形態を次第に整えていった。特に、コクヨ便箋は世間の評価を得て躍進、1932年に発売された「色紙付書翰箋」はヒット商品となった。



昭和年代に紙用品の製造で成長したコクヨは、戦後、1950年代後半には生産体制の見直しを図り、紙以外の事務用品に進出する。そして、1960年に初のスチール製品、ファイリングキャビネットを発売、65年にはスチールデスク、翌年にはホームキャビネット、事務用回転椅子などを発表してオフィス家具メーカーへの地歩を固める。現在では、コクヨの製品は、紙製品、文具、家具、事務機器の4分野にわたり、その総数は3000アイテムを超えるほどに成長している。
・参照:コクヨ・オリジナル余話|コクヨ クロニクル|コクヨ https://www.kokuyo.co.jp/chronicle/yowa/
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♣ キングジム
所在地:東京都千代田区東神田2-10-18 (本社)
HP: https://www.kingjim.co.jp/


→ キングジムは、主にオフィス、家庭用の文房具を企画・製造販売する事務機器メーカー。ファイル用品が主力標品、このほか電子文具小型ラベルライター「テプラ」などで知られる。事務ファイルでは国内第1位、厚型ファイルでは圧倒的シェアを有している。最近では、テキストデータが入力でいる電子文具「ポメラ」も発売するなど多くの独創的商品を手掛けている。同社の創業は1927年、宮本英太郎が、当時使われていた「大福帳」に替わる切り抜き式の名簿帳「人名簿」、「印鑑簿」を製作、会社名を「名鑑堂」と名付けて開店したことがはじまりとされる。1961年に名鑑堂から「キングジム」社名を変更している。


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<筆記用具の資料館―万年筆、鉛筆などー>
♣ パイロットミュージアム「Pen Station(ペン・ステーション)」
所在地:東京都中央区京橋2-6-21(パイロット本社) TEL:03-3538-3700
HP: https://www.pilot.co.jp/ (パイロット社)


→ 2002年から2016年まで運営されていたパイロット社の万年筆ミュージアム。「万年筆とパイロットの歴史がつまったミュージアム」として人気があった資料館「Pen Station(ペン・ステーション)」。現在は閉鎖されたままであるが、本社内で随時展示会を開いているほか、インターネットでパイロット製品と社の歴史を発信している。本社のエントランスギャラリーにて「蝕刻万年筆とインキ瓶展」(2025年)を開催している。また、神奈川で「蒔絵工房NAMIKI」で装飾蒔絵万年筆を展示。

・参考 <ペン・ステーションの紹介>
ここでは、参考のため「ペン・ステーション」を訪問した記事を紹介する。非常に魅力的な資料館だったことを思い、再開を希望しつつ引用。(See: 万年筆とPILOTの歴史がつまったミュージアム「Pen Station(ペン・ステーション)」 https://mai-bun.com/penstation)


→ 国内随一の筆記具ミュージアムとして2002年に開館して以来、“お客様の顔が見える場所”としてパイロット社とユーザーを繋いできた「Pen Station Museum & Café」。展示されていたのは約400点の貴重な筆記用具なコレクション、そのうちの約300点が万年筆。パイロットは1918年に万年筆の製造からスタートしたメーカー。創業者は並木良輔で「日本から世界に誇れるものを送り出したい」と考え生み出したのが、純国産の高品質な万年筆だった。世界ではじめての“キャップのない万年筆”として1963年に発売に成功。展示では、パイロット社の歴史と共に、万年筆やボールペンの仕組みも解説されている。
記事には、「2016年、惜しまれつつも閉館した同館ですが、閉館後も館の様子を文房具ファンに語り継いでいけるよう、記事をつくりたいと取材を申し込んだところ、特別にご対応いただきました」とある。



・参照(https://www.pilot.co.jp/promotion/purpose_creativity/)
・参照:「蝕刻万年筆とインキ瓶展」(2025年)https://www.pilot.co.jp/information/shokoku.pdf
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♣ 蒔絵工房 NAMIKI(パイロット)
所在地:神奈川県平塚市西八幡1-4-3 Tel. 0463-35-7069
HP: https://www.pilot.co.jp/service/koubou_namiki/


→ パイロットは、1926年から、日本が世界に誇る漆芸品のひとつ蒔絵を施した高級万年筆を欧米に展開してきているが、後に人間国宝となる蒔絵師・松田権六氏を中心とした蒔絵師グループ「國光會」を結成し、およそ100年にわたり日本古来の技を研究・発展させ匠の技で蒔絵万年筆を製作してきている。この成果を紹介するため開設した資料館がこの「蒔絵工房」。館内展示室では、大正期からの蒔絵万年筆、蒔絵箱、蒔絵額などの漆芸品、歴代ポスターなど約100点を展示している。かつて海軍火薬廠として使用されていた煉瓦造りの建物を改装した工房では、現在でも蒔絵万年筆を製作しているという。



・参照:大人の社会見学、「蒔絵工房 NAMIKI」に行ってきました!( レアリア)https://rarea.events/event/35380
・参照:蒔絵工房NAMIKI | PILOT https://www.pilot.co.jp/service/koubou_namiki/
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♣ Pen Boutique 書斎館 Aoyama
所在地:港区南青山5-13-11 パンセビル1階
HP: https://www.shosaikan.co.jp/


→ 万年筆の販売専門店であるが、内外の万年筆を展示するショールームともっている。店内は国内外のブランド万年筆や珍しいアンティーク品など、数々の万年筆がずらりならんで陳列されている。また、店の紹介では、万年筆の由来などが記されている。店の運営コンセプトには、「百年以上前のアンティーク文具、子供の頃使った古くて懐かしい文房具、そして現代のブランド筆記具。それらが一緒に並んでおり、カフェもある「異空間」を提供する」と述べられており、見学する価値がある。



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♣ プラチナ萬年筆
所在地:東京都台東区東上野2-5-10
HP: https://www.platinum-pen.co.jp/


→ プラチナ萬年筆は、万年筆をはじめ多くの筆記具を製造、販売をする文具メーカー。主力商品は名前の通り万年筆であるが、採点・添削に用いるソフトペンやボールペンその他筆記具、プレゼンボード(ハレパネ)などを製造。シャープペンシルでは、芯折れ防止機能搭載や記者向けの「プレスマン」や製図用などプロ向け製品も製造している。プラチナ萬年筆の創業者となる中田俊一が1924年に 中屋製作所を創立したのがはじまり。1942年、プラチナ萬年筆株式會社となって現時に至る。
・参照:プラチナ萬年筆 – Wikipedia
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♣ セーラー万年筆
所在地:東京都港区虎ノ門四丁目1番28号 虎ノ門タワーズオフィス
HP* https://sailor.co.jp/


→ 日本初のボールペン製造やカートリッジ式万年筆などを製造する筆記用具の老舗メーカー。万年筆、ボールペン、筆ペン、マーキングペン、インクを製造販売している。近年では、ボールペンに新潟漆器で表面加飾を施した「CYLINT シリーズ」、万年筆ペン先のつけペン hocoroなどを発表している。セーラー万年筆社は、明治44年、阪田久五郎が呉市に「阪田製作所」を創業したのがはじまり、1932年、株式会社化され「セーラー万年筆阪田製作所」を設立、その後、社名変更して現在に至っている。
・参照:セーラー万年筆 – Wikipedia
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♣ 三菱鉛筆の「知る識るペンシル」(Web博物館)
所在地:東京都品川区東大井五丁目23番37号(本社)
HP: https://www.mpuni.co.jp/special/#web_museum
HP: https://www.mpuni.co.jp/ (三菱鉛筆)


→ 鉛筆の大手メーカー三菱鉛筆が提供するインターネット博物館。「UNIの歴史」、「えんぴつ工場見学」、「懐かしのおまけ図鑑」三つの展示から構成される。また、ほかに、鉛筆の歴史、鉛筆の利用テクニックなどの解説も付加されている。以下にそれぞれの項目について簡単に紹介する。

◇ 三菱鉛筆―UNIの歴史―


→ 眞崎仁六が、明治20年「眞崎鉛筆製造所」を東京で設立したのが三菱鉛筆誕生のはじまり。その後、逓信省(現 総務省)へ初めての国産鉛筆(局用1号・2号・3号)を納入して実績を上げ、1925年に色鉛筆製造元である「大和鉛筆」と合併、「眞崎大和鉛筆」となっている。1951年には、商標となっていた“三菱”を冠して、社名を三菱鉛筆と改めている。
1958年には、高級鉛筆「ユニ」(UNI)を発売し世界に通用する国産鉛筆メーカーとしての地位を確立している。UNIは、その後も躍進を続け、日本のみならず海外でもロングセラーの高級鉛筆として売り上げを伸ばしている。


・参照:旧眞崎鉛筆製造所跡(鉛筆の碑) https://gijyutu.com/ohki/isan/isan-chiiki/tokyo/enpitsu/enpitsu.htm
・参照: 真崎仁六―日本鉛筆工業の創始者―(さがの歴史・文化お宝帳)https://www.saga-otakara.jp/search/detail.html?cultureId=669
◇ 三菱鉛筆の「えんぴつ工場見学」

→ 三菱鉛筆社の提供のWEBによるバーチャルでの工場内部の紹介を行っているコーナー。鉛筆ができるまで、色鉛筆ができるまでの二つのコースを用意している。えんぴつの芯(しん)は、どうやって木の中に入れるのか、えんぴつの芯(しん)は、何からできているんだろう、といった疑問に答えるかたちで初心者にもわかるよう紹介している。中には、懐かしのオマケ図鑑、鉛筆・色鉛筆―プロが教えるテクニック集―といったコーナーも用意されている。

・参照:特集|三菱鉛筆株式会社 https://www.mpuni.co.jp/special/
・参照:えんぴつができるまで|特集|三菱鉛筆株式会社 https://www.mpuni.co.jp/special/tour/pencil.html
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♣ トンボ鉛筆
所在地:東京都北区豊島6丁目10番12号
HP: https://www.tombow.com/



→ 日本の鉛筆製造元としては三菱鉛筆と共に大手として知られる。鉛筆をはじめとした文房具の「MONO(モノ)」ブランドで知られ、2007年には消しゴム、修正テープ、スティックのり、テープのりの国内シェアは1位となっている。1913年(大正2年)に、小川春之助が浅草に前身「小川春之助商店」を開業したのがはじまり。1927年「トンボ印」を商標にして鉛筆を発売、1939年、製造部門はトンボ鉛筆製作所、販売部門はトンボ鉛筆商事となり、1964年に現社名のトンボ鉛筆となっている。
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♣ 北星鉛筆(見学可能)
所在地:東京都葛飾区四つ木 1-23-11 Tel. 03-3693-0777
HP: http://www.kitaboshi.co.jp/



→ 古くからの鉛筆メーカーで数多くの種類の鉛筆を製造しているが、芯を削る機能がついたユニークな鉛筆「大人の鉛筆」などの新商品も発売している。最近では、循環型鉛筆産業目指し環境に優しい文具づくりを図っている。
北星鉛筆は、1943年に北海道で鉛筆用木材の製造を行っていた杉谷木材が旧北星鉛筆を買収したことから始まった。北星ブランドの系譜は、戦前のメジャーブランドである月星鉛筆に繋がるという。四つ木の工場には「東京ペンシルラボ」という鉛筆学習施設を併設し、一般向けに工場見学を受け付けている。
・参照:北星鉛筆 – Wikipedia
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♣ ぺんてる(工場見学可能)
所在地:東京都中央区日本橋小網町7番2号
HP: https://www.pentel.co.jp/corporate/
HP: https://csv.pentel.co.jp/ja/sustainability/society/tour.html


→ ぺんてる社はサインペン、筆ペンなどの製品で知られる大手文具メーカー。この茨城工場では学校生と地域住民、顧客向けなどに工場見学を随時実施している。社では、筆記具や画材が生産されている現場を間近で見て、「ぺんてる」のものづくりの姿勢や環境保全への取り組みを見学して欲しいとしている。主な取扱商品としてサインペン、筆ペン、ボールペン、消しゴム、シャープペンシル、シャープペンシル替芯、修正テープなどの筆記器具、絵具、マーカーなどの画材などがある。




ちなみに、筆職人の堀江利定が1911年に筆や墨、硯の卸問屋「堀江文海堂」を開業、1946年に息子の堀江幸夫が「大日本文具株式会社」を設立、これが現ぺんてる社の基となった。当初は文具の卸売業であったが、後に自社、粉墨とクレヨンを生産を開始、次第に範囲を広げ他の筆記用具、文具も手がけるようになった。創業以来、「ペン先技術」「色」「気軽に使える商品の開発」を重点とし、サインペン、プラマン、ぺんてる筆、エフ水彩などを生み出している。現在では、文具の開発で培った技術を応用し、タッチパネルや液晶パネルなどハイテク分野にも進出している。
・参照:ぺんてるのあゆみ | (ぺんてる サステナビリティサイ)https://csv.pentel.co.jp/ja/sustainability/thought/history.html
・参照:https://www.pentel.co.jp/corporate/history/
・参照:ぺんてる – Wikipedia
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♣ テイボー
所在地:静岡県浜松市中央区向宿1丁目2番1号
HP: https://www.teibow.co.jp/


→ テイボーは、マーキングペン先および金属射出成型部品の製造・販売を行う企業。マーキングの販売では、国内および世界のトップクラスである。貿易商だった野沢卯之吉が、1896年、フェルト製の中折れ帽の製造会社を開いたのがはじまり。社名テイボーは創業時の社名「帝国製帽株式会社」に由来するという。中折れ帽事業の衰退のあと、帽子製造で培ったフェルト加工技術を生かしてフェルト製のペン先の製造から、現在のマーキングペン開発につながった。


・参照:世界トップシェアに!テイボー株式会社/浜松|静岡新聞アットエスhttps://www.at-s.com/life/article/ats/1044359.html
・参照 https://teibow.co.jp/business/
・参照:テイボー – Wikipedia
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♣ ゼブラ
所在地:東京都新宿区東五軒町2-9
HP: https://www.zebra.co.jp/


→ ボールペンでは三菱鉛筆、パイロットと並ぶ筆記用具のメーカー。赤・黒・シャープペンがロータリー式に動く「SHARBO」ボールペン、5機能をコンパクトに収めた「クリップ・オン マルチ」などが代表商品。1897年、石川徳松が松崎仙蔵の協力を得て国産初の鋼ペン先の開発に成功し、その後「石川ペン先製作所」として創業した。1914年にはシマウマをデザインしたロゴマークを商標として採用し、「ゼブラペン」ブランドを確立している。1957年、ペン先に代わる新しい筆記具としてボールペンの開発に着手。その後、3色ボールペン、フェルトペン(ハイマッキー)、シャープペンを合体させたシャーボなどの筆記具を開発している。


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♣ ボールペン資料館(インターネット博物館)
HP: http://www.bekkoame.ne.jp/~tax/



→ 個人で運営するボールペンの展示ブログ。世の中に出回っている変わったボールペンをカテゴリー別に分類してデジカメ画像で紹介している。例えば、時計やシェーバーなど筆記以外の機能が付いたボールペン、犬、猫、爬虫類などのデザインのボールペン、特殊形態(形状)ボールペン、イベントで配られたモノや商品のオマケなど、販促物件などなど、遊び心にあふれた展示物が沢山みられる。
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<伝統の筆、墨、硯などの工芸品>
♣ 筆の里工房 (熊野筆)
所在地:広島県安芸郡熊野町中溝5-17-1 Tel. 082-855-3010
HP: https://fude.or.jp/jp/


→ 熊野町には180年の筆づくりの歴史を有する伝統的工芸品「熊野筆」がある。この筆の里工房では,筆づくりの町という地域性を活いかして、筆が生み出す書や絵画,工芸,化粧などさまざまな「筆文化」を紹介している。館内では,筆職人による筆づくりの実演や筆の歴史を紹介する常設展示,「筆文化」を紹介する企画展を行っており,博物館と美術館の両方の要素を持った施設となっている。


・参照:体験でつなぐ筆の世界(文化庁広報誌 ぶんかる)https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/museum/museum_034.html
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♣ 墨の資料館 | 墨運堂
所在地:奈良県奈良市六条1丁目5-35 墨運堂本社
HP: https://boku-undo.co.jp/sumi_museum.html


→ 墨・書画用品のメーカー墨運堂が運営する「墨」の資料館。ここでは、墨がどのような歴史を刻み、どのように造られるのかを展示しており、実際の型入れ作業の現場を目の当たりに見ることができる。また、これまで墨運堂が収集して来た書画にまつわる歴史的な資料や著名作家による書画作家の作品などを展示し、筆記具文化を芸術と技の両面からご紹介している。館内では、エントランスの巨大な硯と筆の展示に続いて、2階の展示室には、墨の製造に使う小道具、製造工程の写真パネルとジオラマがあり、職人の作業が見学できる。次のコーナーは墨の歴史と中国、韓国など海外の墨を展示、そして、墨運堂の百選墨、題字墨、変形墨、記念墨が展示という構成になっている。中には、伊勢神宮に奉納された日本一の巨大金巻墨など貴重な展示もなされている。



ちなみに、墨運堂は文化2年(1805)、今から200年前に墨屋九兵衛が奈良の餅飯殿において屋号を御坊藤と称し墨の製造を始めたのがはじまり。 その後屋号を「松井墨雲堂」と改称し、明治33年「松井墨運堂」と改め、昭和25年に現代の「株式会社墨運堂」を設立している。
・参照:墨運堂のお話(奈良物語) https://naramono.com/?mode=f3
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♣ 雄勝硯伝統産業会館(雄勝硯生産販売協同組合)
所在地:宮城県石巻市雄勝町下雄勝2丁目17番地 Tel. 0225-57-3211
HP: https://www.ogatsu-suzuri.jp/ogatsu-suzuri-traditional-industry/


→ 雄勝石とは北上山系に産する黒色硬質粘板岩で、圧縮に強く吸水率が低いため硯石として適しているといわれる。特に、石巻市雄勝地区の「雄勝硯」は600年以上の歴史と伝統を持つ伝統工芸品。この雄勝硯の伝統文化を伝えることを目的とした開設された施設が雄勝硯伝統産業会館。雄勝硯生産販売協同組合が運営している。「雄勝石」で作られた硯をはじめ、昨今注目されている雄勝石で作られたテーブルウエアなどが観覧・購入できる。実際に手に取って、色合いや手触り、重みを感じることもできるという。



・参照:雄勝硯生産販売共同組合 – 雄勝硯生産販売協同組合https://www.ogatsu-suzuri.jp/
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<計算用具・計量用具など>
♣ 日本そろばん資料館 (全国珠算教育連盟))
所在地:東京都台東区下谷2丁目17-4 Tel.03-3875-6636
HP: https://www.soroban.or.jp/howto/arekore/museum/


→ そろばん(算盤)の発展を伝える歴史と共に多様な算盤機種を展示。日本そろばん資料館は、そろばんの継承と更なる発展を図るべく、珠算教育を通じて子供たちの学力の育成、一般の生涯教育など役立つことができるよう珠算やそろばんに関する資料の保存、展示を行っている。展示では、(歴史的な)古そろばん、そろばんの歴史コーナー、古書・学習コーナーがあり、そろばんにはどんな形があり、どのような発展を遂げたがわかるよう構成されている。例えば、日本最古のそろばん、江戸時代のそろばん、形の変わったロール式そろばん、円形そろばん、世界のそろばんでは中語、ロシアのそろばん、等がみられる。



◇ そろばんの歴史


線そろばん
→ ここでは、資料館を参照しつつそろばんの歴史をみてみる。
まず、そろばんの発達は数学の発展と結びつきつつ計算用具として発達してきたと考えられるようだ。約5000年前、メソポタミアで土や砂の上に線をひき、そこに小石を置いて計算を行っていたが、これが「そろばん」の原形だといわれている。中国では3,500年位前から、竹の棒(籌)を用いて計算を行っている。これが後に日本にも伝わり、算木という形で紙や布、木でできた計算盤「算盤」(サンバン)となった。



16世紀頃には、現在のそろばんの形近い「陣中そろばん」も記録されている。江戸時代になると、商業の発達や寺子屋の隆盛により、「読み書きそろばん」といわれたように、武士や商人の間でそろばんが広く用いられるようになる。 また、日本特有の数学「和算」の補助道具として算木も使われた(「塵劫記」)。明治も中頃になり、学校で“そろばん”が教えられ一般に広く普及する。日本のそろばんは中国と異なって珠が菱形、当初は上部2珠、下部5珠であったが、昭和期に現在の1珠4珠の形状になった。戦後には珠算検定も行われ日本の計算能力を高めた。今日、電卓の普及でそろばんは余り使われなくなったが、日本の計算文化として今でも根強い人気がある。



・参照:日本のそろばん|日本珠算連盟―歴史― https://www.shuzan.jp/gakushu/history/05.html
・参照:そろばんの歴史 | 公益社団法人全国珠算教育連盟 https://www.soroban.or.jp/museum/history/
・参照:時代劇&そろばん https://soroban-movie.com/museum.html
・参照:塵劫記 – Wikipedia
・参考:白井そろばん博物館(千葉県) (https://soroban-muse.com/)
・参考:大垣そろばん資料館 (大阪) (https://soroban-movie.com/museum.html)
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♣ 雲州そろばん伝統産業会館
所在地:島根県仁多郡奥出雲町横田992-2 Tel.0854-52-0369
HP: https://okuizumo.org/jp/guide/detail/189/


→ 島根県奥出雲横田のそろばんは「雲州そろばん」と呼ばれ今日高い評価を受けている。この産業会館では、横田での算盤製作の歴史、伝統技術法、原材料と工具、製造工程、名工になる工芸作品のそろばん作品などが展示されている。
江戸時代後期、島根県仁多町の大工が広島の職人が作ったそろばんを手本に、この横田地方で採れるカシ、ウメ、ススタケを材料として見事なそろばんを作りはじめたのが「雲州そろばん」のはじめだという。その後、横田町の職人が珠(たま)を削る手回しろくろを完成させたことで、急激に生産が増えて地場産業としての基礎ができた。品質が良く「そろばんといえば雲州」と言われるようになり今に至っている。国の登録有形民俗文化財となった「雲州そろばんの製作用具」も開館に常設展示されている。


・参照:雲州そろばん(伝統工芸 青山スクエア) https://kougeihin.jp/craft/1006/
・参照:雲州そろばんの製作用具(文化遺産オンライン)https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/160711
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♣ 東京理科大学科学資料館―計算道具コレクションー
東京都新宿区神楽坂1-3 東京理科大学
HP: https://www.tus.ac.jp/info/setubi/museum/
・参照:https://igsforum.com/visit-rikadai-kagaku-haku/


→ 東京理科大学科学資料館は、同大学の研究成果や科学製品・機器などを豊富に収蔵する科学資料館。特に、古代時代から現在までの計算機器、電子計算機、コンピュータ関係のユニークなコレクションを誇っている。明治時代の洋館校舎を使い開設している ここでは、電子計算機以外の計算機器以外の歴史的な計算器具の展示を紹介しておく。



近世以降、開発された計算道具は各種あるが、資料館では機械式の計算機と計算尺、アリスモメーターなどの歴史展示が豊富である。例えば、17世紀に発明された「ライプニッツ計算機」のレプリカも展示、さ。日本のものでは、古い時代のワラを使った計算用具、「和算」に使われた「算木」、「そろばん」のコレクションがある。日本では長い間「そろばん」が最もポプラーな計算用具であったが、戦後1950年代以降には機械式の計算機が登場してくる。



このうち広く使われたのが「タイガー式計算機」。資料館の機械式計算機のコーナーには、この歴代モデルが幅広く展示されている。また、資料館には、1970年代以降の多様な「電卓」の展示もあり、重量のあるものからカードサイズの電卓と時代に沿って電卓が進化して幾様子もよくわかる内容となっている。
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♣ 計算尺資料館(WEB)
★計算尺資料館
・参照:http://www.keisanjyaku.com/sliderules.htm
・参照:http://www.keisanjyaku.com/index.html


→ インターネットのホームページで「計算尺愛好会」による国内外各種計算尺の紹介がなされている。ヘンミの計算尺はじめ各種の計算尺を機能別に紹介。
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<計量機器、ものさしなど>
♣ 『東洋計量史資料館』| 度(ものさし)
所在地:長野県松本市埋橋1-9-18 Tel. 080-9741-3795
HP: https://www.toyo-keiki.co.jp/toyokeiryoushi/collection/measure/measure.html


→「はかり」をテーマとした資料館のなかで、所蔵点数・展示点数ともに国内最大の規模を誇る資料館。秤・枡・物指など、度量衡に関係する歴史資料を展示するほか、日本では目にする機会の少ない、海外の貴重な資料も数多く展示している。


日経新聞の記事によれば、資料館は、戦前から高度成長期に活躍した5種類の「工業用はかり」の寄贈をクボタから受け、5日に展示を始めたという。いずれも計測方法に巧妙な工夫を取り入れた機械式計量器で、製糸業から土木工事まで様々な現場を支えた品々としている。

このうち、「ものさし」コレクションでは、中国の古尺、江戸時代の樋定規、鯨尺、念仏尺、面儀尺、引掛尺、欧州のものさし、足測定用スケール、しもく尺(文木)などといったものが展示されている。
・参照:東洋計量史資料館、戦前〜高度成長期の工業用はかり展示 (日本経済新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC056SS0V00C24A4000000/
・参照:東洋計量史資料館 – 信州の文化施設 – 公益財団法人 八十二文化財団 https://www.82bunka.or.jp/bunkashisetsu/detail.php?no=944
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♣ 国立科学博物館 理工電子資料館―3種のものさしコレクションー
所在地:東京都台東区上野公園7番20号
HP: https://www.kahaku.go.jp/index.php
HP: https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/past_parmanent/rikou/weights_and_measures/ruler.html


→ 日本の度量衡制定の移行の基となった「ものさし」が国立科学博物館に所蔵されている。これが享保尺・又四郎尺・折衷尺の三つで、これが基準となって現在のメートル法に移行がなされたという歴史的なものである。
この背景をみると、日本は明治になっても江戸時代の度量衡を使っており、尺貫法では日本の近代化を進める上で大きな障害があったことが挙げられる。この改正のため、明治政府は度量衡改正掛を設置し調査を開始した。しかし、社会に浸透している尺貫法を改正するのは大変な作業となる。改正掛は、まず長さについては既に国際統一制度として認められつつあったメートル法と尺の関係を作ろうとした。

当時、ものさしは大きく土木建築用(曲尺)と裁縫用(鯨尺)の2系統に分かれ複雑だった。何回かの紆余曲折の末、政府は、1875(明治8)年、「折衷尺」を基準とした「度量衡取締条例」が公布。この時1メートルが3.3尺と決めた。改正にあたって、長さの参考にされたのが享保尺、折衷尺、又四郎尺の3本で、江戸時代の関流和算家内田五観が所蔵していたものといわれる。その後、日本がメートル条約に加盟するのは、1886(明治19)年、尺貫法併用から完全にメートル法に移行したのは1958(昭和33)年である。この「三種のものさし」は、日本の産業、社会生活にとって記念すべき歴史的展示物であろう。


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<参考> 度量衡の成立から現在までのメートル法計測の推移・・・
・参照:身近な単位の秘密(個別指導のDr関塾2022年6月号特集)https://www.kanjukutimes.com/media/kiji.php?n=2124
(文具博 了)