――日本の電信電話のルーツと技術開発の歴史を知るー

幕末に初めて日本に電気通信機器が紹介されてから150年、この間の通信事業・技術の展開は目を見張るものがある。簡便な電信から電話サービスの導入、交換機の改良と自動化、通信装置の電子化、マイクロ波の開発、衛星通信、マルティメヂアの普及など数限りない。また、個人の電話は、固定電話から携帯電話、現在ではスマートフォンとなって、あらゆる情報が個人で扱えるようになった。 これら通信技術の歴史と現在を扱った博物館は多数に上る。今回は、先回の「郵便」に続いて無線を中心とした各種情報通信の博物館を紹介することにする。
取り上げたのは、 NTT技術史料館、NTTドコモ歴史展示スクエア、KDDIミュージアム、門司電気通信レトロ館、UECミュージアムなどである。
♣ NTT技術史料館
所在地:東京都武蔵野市緑町3-9-11 NTT武蔵野研究開発センタ内
HP: http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/
・参考:「NTT技術史料館」を見学するhttps://igsforum.com/2020-03-02-visit-ntt-history-center-of-technology-tokyo-jj/


→ NTTが設立した総合的な情報通信技術の史料館。館内は「歴史をたどる」と「技術をさぐる」の二部構成になっており、NTT自身の開発した情報通信技術のほか、日本全体の通信、電話、情報機器の発達を示す多数の資料を収蔵・展示している。幕末に初めて日本に電気通信機器が紹介されてから150年、この間の通信事業・技術の展開は目を見張るものがある。簡便な電信から電話サービスの導入、交換機の改良と自動化、通信装置の電子化、マイクロ波の開発、マルティメヂアの普及など数限りないが、この点を踏まえた展示には見応えがある。特に、初期の電信・電話の導入期の逸話、電気通信の原理や発展の歴史を扱った展示コーナーは珍しく貴重である。館内展示は多岐にわたっており、施設も巨大で一日では回りきれないほどの膨大な展示内容を誇っている。



<展示構成と内容の概略>


「歴史」コースでは、初期の電信・電話の導入・普及期の逸話からはじまり、戦後の本格的な実用化、1970年代からの技術革新と電気通信の多様化、80年代からのディジタル技術の導入、今日のマルティメヂア、モバイル、国際化といったテーマで展示がなされている。日本の社会生活と経済ビジネスの世界でどのように電気通信が活用されてきたかがわかる。「技術」では、交換機、トランスミッション技術、電子計算機との融合、通信インフラ技術、光通信、モバイル、画像転送技術といったのが展示内容である。 展示では、時代を画した製品や機器が豊富に並んでおり、時代の推移と技術の発展を実感できる。また、階下には、幕末・明治にかけての電信、電話の導入期の人々の様子も壁画に描かれていて興味深い。初心者には電気通信の原理や技術の基礎がわかるように初期通信機械の機能モデルが設けられており、実際に操作し実験できるのもうれしい。
<電信電話のことはじめの展示>


まずは、初期の逸話と機器の登場展示では、壁面に描かれた日本社会への電信機器の受容を描いた大きなイラストが目につく。第一に描かれているのは、1854年、ペリーが幕府に「通信機」を持ち込んで紹介しているシーン。日本人が初めて実際の電気通信装置を見た驚きを再現したものだといわれる。また、通信の重要性を実感した明治政府が、明治2年(1868)に早くも電信の導入を図るため東京・横浜間に仮設工事を行った様子、1980年には電信サービスを始めた年譜などもみられる。展示品では、ペリーの持ち込んだモールス電信機の写真、日本で最初に使われたに「ブレゲー指字式電信機」などがある。


一方、電話普及の展示では、明治23年(1890)に東京横浜間で初めての電話サービスが開始されたことが記されている。当時、電話交換局の交換手によって一つ一つ手動で交換通話する煩雑なもので非常に高価な通話料であったという。史料館では、ベルの電話機を模倣して製作された「国産一号電話機」、{磁石式手動交換機」の実物が展示されている。また、当時の電話の普及を描いた壁面もあり興味深い展示である。
<電気通信の自主技術開発の時代の展示>



明治後期までに電信電話の一般への普及は急速に進んでいたが、その技術の大半は海外に依存せざるを得ない状況が長く続いた。そのなかでも、先端技術の積極的な摂取と消化、それに基づく自主技術の開発も多くなされたことにも触れられている。中でも、TYK無線電話開発、無装荷搬送方式の開発、装荷ケーブルと装荷コイルの開発、写真電送装置、T形自動交換機、軍事用レーダー開発などがあげられるが、展示でもこれが示されている。電話機の展示では、種々の形状、機能をもった実物が例示され、公衆電話も普及したことも指摘されている。史料館の展示では、装荷ケーブル、フレミングの2極真空管、デ・フォレストの3極真空管などが見られるほか、時代時代の電話機の見本が数多く展示されている。
<戦後復興から成長の時代の電気通信>


軍事用通信から民生部門の電気通信の進展が大きく歩み出したのは、第二次世界大戦後の1950年代からである。電気通信を主導したのはNTTの前身「電電公社」であった。公社が取り組んだのは「電話」網の拡大とサービスの向上。この過程で開発されたのが国産の「四号電話機」である。これまでのカワーベルから三号電話機でも、すべて外国製品の模倣であったが、初めて高品質品の自主開発となった。また、電報サービスと中継交換の整備、海底ケーブルの拡大、国際通信の復興とテレックス通信の開始、マイクロ波によるテレビ放送開始、装置面では自動交換機「クロスバー交換機」の登場、同軸ケーブルの開発などが大きく進んだ。 史料館では、時代疑似空間を使いながらこの間の社会変化と機器の進歩の様子を描写していて興味深い。例えば、当時の公衆電話機(赤電話)、各種の電話機、初期のクロスバー交換機、同軸ケーブル、職場に普及したテレックス、構内交換機(PBX)などが時代を追って進歩している姿が展示されている。
<本格的な通信分野の技術革新と多様化>

戦後の高度成長時期を終えるころになると、日本でも社会生活の変化に応じた電気通信技術の新しい段階に入ってくる。電話機の広汎な普及と交換機の電子交換機への進化、コンピュータネットワークによるデータ通信サービスの開始、移動通信サービスの自動車・携帯電話の登場、各種通信技術の開発が進展した時期である。 史料館では、当時の社会生活に必須となった公衆電話の普及、画像伝送・ファクシミリ、移動通信の開始、電子式電話交換機の開発などの様子を、多くの写真、現物展示を展示している。例えば、D10形自動交換機、各種形状と機能の電話機、データ通信に対応するプッシュホン、開発初期の自動車電話、ファクシミリ装置、などである。電気通信網が当時の社会やビジネスの世界に広く浸透していることがうかがえる。また、この間の技術進歩が世界でも日本でも急速に進みつつあったこともわかる。
<ディジタル技術とマルチメディアの時代>



1980年代半ば以降の電気通信事業の歩みをみると、技術、サービス提供の面でさらに進歩が加速し社会に深く根付いていることが展示からもうかがえる。通信手段は、アナログからディジタルの時代へと大きな移行し、多量な音、映像、文書データがネットワークを通じて同時に扱えるようになった。また、移動通信の急速な発展やインターネットの普及が進み、通信の新しい時代が始まることになる。1985年には、民営化したNTTが伝送容量の飛躍的な増大をはかるため「光伝送」も導入している。そして、自動車電話から始まった移動体通信は急速に発展、固定電話網に匹敵する巨大ネットワークへと成長、また、移動デバイスの小型化、電波利用効率の向上が進む一方、インターネットの普及も進んでいく。衛星通信が活発化するのもこの時期である。

史料館では、各種光エレクトニクスの機器・装置、多機能化する固定電話と携帯電話、ISDNに対応するディジタル端末、テレビ電話機、イントラネット、マルチメディア環境をサポートするユーザ機器、さらには技術試験衛星ETS-VIの実験モデルなども展示されている。ビジネス環境の展示では、テレックスからコンピュータ通信へ、日本語OCRや音声合成技術画像通信と画像情報提供システムなども紹介されている。
<今日のインターネット環境と通信世界>


日本でも、現在、インターネットのひろがりとともに新たな通信システムの構築が進行中に見えるが、この点での史料館の実物展示はあまり多くない。「史料」館という性格や「移動通信については“NTTドコモ”が主役になっていることが影響しているようだ。それでも、NTT自体が取り組んでいる幾つかの方向性が確認できる。 例えば、OCNの導入・発展、インターネットを利用した音声通信や映像配信、かつて一時代を画した「iモード機器」、IPv6インターネット国際実験ネットワークの構築・運用などの活動内容が紹介されている。通信ソフト面でも、制御プログラムを核に多様な展開、階層アーキテクチャ、大規模データベース、ソフトウエア生産技術、媒体の変化なども展示で示されている。電気通信サービスは有線固定電話網から無線通信サービスへ大きくシフトへ、モバイル通信も3Gから4Gへ、そして5G世代への移行が叫ばれる中、有線通信サービスに基盤を置いてきたNTTが蓄積してきた膨大な技術資産を生かして、今後どのように通信事業を展開していくか興味のあるところである。
<参考資料>
- 参照:「NTT技術史料館」を見学するhttps://igsforum.com/2020-03-02-visit-ntt-history-center-of-technology-tokyo-jj/
- 参照:NTT技術史料館HP: http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/
- 参照:NTT技術史料館 技術史のラウンジ http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/floorguide/history_05.html
- 参照:NTT技術史料館紹介: https://electrelic.com/electrelic/node/897
- 参照:電話機の歩み https://www.ntt-east.co.jp/databook/pdf/denwakinoayumi
- 参照:固定電話の歴史:https://www.kogures.com/hitoshi/history/tushin-denwa/index.html
- 参照:NTT技術史料館に行ってきた(うにょーん)https://note.com/unyoon_san/n/nfb3120ae0ddc
- 参照:「ビジュアル版 日本の技術100年」(5) 通信・放送 (筑摩書房)
- 参照:「通信の世紀」大野哲弥 (新潮選書)・参照:
- 参照:「電気通信物語」城水基次郎 (オーム社)
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♣ NTTドコモ歴史展示スクエア
所在地:東京都墨田区横網1丁目9−2 ドコモ墨田ビル Tel. 03-6658-3535
HP: http://history-s.nttdocomo.co.jp/


→ ドコモ歴史展示スクエアは、日本のNTTドコモを中心とした携帯電話の歴史を紹介する博物館。2004年に誕生している。館内には、歴史展示コーナー、特殊電話コーナー、体験コーナーが設けられており、日本の移動体通信の歴史をテーマにした自動車電話、船舶電話、ポケットベル、携帯情報端末(PDA)、各種携帯電話機種など300点以上の実機が紹介・展示されている。ここでは、初の携帯電話であるショルダーフォンや携帯電話が普及する前の連絡手段として重宝したポケベル、他ではあまりお目にかかれないMova、FOMA時代の携帯電話などの貴重な機種を見ることができる。 現在、携帯電話はスマートフォンに移っており、ここで展示されているのは一時代古いものが中心であるが、かつて、世界に先駆けて一時代を築いたとされる日本における移動体通信技術の発展をみる上では貴重な存在である。



<日本における携帯電話の歴史>



携帯電話の前身と呼べるものは、1940年代、アメリカ軍が使用したモトローラのトランシーバー「Walkie Talkie」であるとされる。しかし、一般向けの携帯電話の歴史は、1973年にモトローラが初めて無線通話に成功したことを受けて、1983年に世界初の市販機を発売したことに始まる。日本では、1970年に開催された大阪万博の電気通信館で、携帯型の無線電話機「ワイヤレステレホン」が出展され、デモ通話を行ったのが最初とされる。そして、1985年に当時の日本電信電話公社が、携帯電話機(ショルダ型自動車電話)100型を日本で初めて登場させ、レンタルサービスを開始している。車外でも使用できる自動車電話という位置づけであり、電話機の重量も約3kgと重かったため、携帯時はショルダーバッグのように肩にかけて持ち出す必要があった。1989年には携帯電話TZ-803B(製造 日本電気・松下通信工業)が発表され、重量640gと小型・軽量化が進展している。


1986年には電波法が改正され、自動車以外でも自動車電話が使用できるようになり、特急列車や高速バスにも自動車電話が設置されている。1993年、NTTドコモがPDCデジタル方式(第二世代携帯電話(2G))の携帯・自動車電話サービスを開始、世界初のデジタル携帯電話を使ったデータ通信サービスを開始、1994年には、日本移動通信(IDO KDDIの前身の一つ)もPDCデジタル方式の携帯・自動車電話サービスを開始している。

こういった中、1993年に第二世代デジタルコードレス電話として開発されたPHSが、1995年、簡易型携帯電話サービスとして開始され、端末や通話料の安さもあり若年層を中心に電話の新しいスタイルとして普及する。PHSは、ショートメール(SMS)、セルラー文字サービス(DDIセルラー)、Pメール(旧DDIポケット)も可能であった。1997年には携帯電話ドコモ・ムーバ“mova”でもSMSも始まっている。この経過は、展示されている歴史館に携帯電話の実物と共に紹介されている。
<インターネットとE-mail、カメラ内蔵携帯電話の普及>

1999年には、ドコモが“iモード”を発表、DDIセルラーグループ・IDOが「EZweb」を開始し、世界に先駆けて携帯電話を使った携帯電話IP接続サービスを提供するなど、2000年代にかけて、情報を自ら受発信する時代へと移行していることがわかる。この下で、SMS(ショートメール)から携帯メール(キャリアメール)、新たなコミュニケーションの手段として液晶ディスプレイによる顔文字や絵文字の登場、ネットやメール対応した多機能携帯の登場、形状もストレート型から折りたたみ型に転換など、使い勝手も改善された。また、この頃から音楽聴取やゲームも携帯ですることが一般的になり、携帯カメラで撮影やテレビ電話も行われるようになった。
また、2001年、日本ではNTTドコモによる第三世代携帯電話(3G、W-CDMA)の商用サービスが開始、2002年にはVodafone(現・ソフトバンク)でW-CDMA方式の3Gサービス、KDDIでCDMA2000 1x方式の3Gサービスを開始している。このことは展示に詳しい。
<スマートフォンの登場による新たな変革>

スマートフォンは、パーソナルコンピュータなみの機能をもたせた携帯電話であるが、これは、1996年のノキアによる電話機能付きPDA端末の発売から始まり、2007年のApple製スマートフォン「iPhone」発売およびGoogleによる基本ソフト「Android」の発表によって世界的に広く普及した情報端末電話。日本についてみると、2000年代後半からのiPhoneやAndroidスマートフォンの登場によって、残念ながら、日本の企業は国際端末メーカーに市場を奪われつつあるようだ。特に、2010年代、スマートフォンが急速に普及してからは、携帯電話のコモディティ化が進み、端末の買い替え需要も低下、日本勢の携帯電話は低迷を余儀なくされている。この点での、NTTドコモ歴史スクエアの展示には余り多く触れられていないのは残念なところ。
- 参照:NTTドコモ歴史展示スクエアをご紹介(企業情報 NTTドコモ)https://www.docomo.ne.jp/corporate/anatatodocomo/docomoeveryday/article07/
- 参照:携帯電話の歴史情報通信白書 for Kids:―携帯電話の歴史―(総務省)https://www.soumu.go.jp/hakusho-kids/life/what/what_13.html
- 参照:NTTドコモ歴史展示スクエア(文化庁広報誌 ぶんかる)https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/naname/naname_071.html
- 参照:「NTTドコモ歴史展示スクエア」に行ってきた(スタッフブログ・マイネ王)https://king.mineo.jp/staff_blogs/2564
- 参照:日本における携帯電話 – Wikipedia
- 参照:スマートフォン – Wikipedia
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♣ KDDIミュージアム
所在地:東京都多摩市鶴牧3-5-3 LINK FOREST 2F
HP: https://www.kddi.com/museum/


→ KDDIミュージアムは、2004年に東京多摩市に開設された国際通信の歴史を紹介する博物館。約150年にわたる日本の国際通信の歴史を実物の機器や資料で解説し、KDDIの携帯電話とスマートフォンの実物、最新の5GやIoT技術の紹介も行っている。 館内は、AからDまでの展示ソーンに分かれており、それぞれ、日本の国際通信、KDDI挑戦の軌跡、au携帯電話とスマートフォン、未来への挑戦などがテーマとなっている。



<日本の国際通信の進展>


最初の「日本の国際通信」は歴史がテーマ。国際通信のはじまり、海底通信、電波でつながる世界、KDDに始まる戦後の国際通信、衛星通信の開始、深海の海底ケーブルが対象になっている。 ここでは、まず、幕末の日本にペリー提督が黒船で電信技術をもたらしたこと、情報を運ぶ手段が飛脚や馬から、電信に変わっていった歴史経緯をエピソードと展示物で紹介。そして、1871(明治4)年、長崎・小ヶ倉を基点に引き込まれた海底電信ケーブルにより日本の通信が世界と初めてつながった経緯を解説。展示では、小ヶ倉に建てられたレンガと石造りの建物、海底線陸揚庫の中に置かれた予備通信席を復元示、海外へ電報を送る際に使用された電信機の実物などを見ることができる。



電波の発見によって国際通信の主役は海底電信から無線に代わって幾中で、情報は符号(文字情報)だけでなく、音声や写真に広がっていく。ここのコーナーでは長波送信所の建物に設置された巨大な碍子、短波無線通信用に開発された真空管などが展示されている。

戦後の日本の国際通信は、1953年、国際電信電話株式会社(KDD)の創設によって始まる。1964には第1太平洋横断ケーブル(TPC-1)も開通。また、1960年代。情報通信の需要が高まるなか、日本は米国が提唱する衛星通信ネットワーク構想に参画することで新しい時代を迎えることなる。1963年、初の日米間テレビ宇宙中継実験も行われている。展示では、衛星通信の装置、KDDの短波送受信機、海底ケーブルなどが、パネル解説と共に実物も陳列されている。
<KDDIの通信市場参入と挑戦>


1985年、長く独占的に国際電信電話業務を担ってきた旧電電公社から分離したKDD が民営化され、日本の通信市場も自由化される。このうち、第二電電(DDI)が、いち早く電話事業に参入を表明、同じく、IDO(日本移動通信)が、1988年、「ショルダーフォン」で携帯電話市場に進出する。この三社は、DDIの主導の下で2000年に統合され、現在のKDDIが誕生する。この間の1985年から2000年までの通信と社会の出来事が年表形式で振り返るコーナーが設けられている。 例えば、DDIが新規参入事業者として巨大企業NTTに挑戦した軌跡の映像。IDO(日本移動通信)が1988年に提供を開始した「ショルダーフォン」と小型化していく過程の貴重な携帯電話の展示などである。また、「通信おもいでタイムライン」のコーナーでは、通信がより身近になる1980〜1990年代のできごとや、通信市場の活性化による社会や暮らしの変遷などが、壁面の年表やパネルイラストで解説されている。「改札口の伝言板」「テレホンカード(1982)」「ポケベルブーム(1993)」「インターネット“元年”(1995)」などは記憶に残るシーンである。
<KDDI歴代の携帯電話とスマートフォーンの登場>



Cゾーンの展示はKDDIが誕生してからの通信市場の進展がテーマ。ここでは2000年ら現在までのKDDIのブランドau携帯電話サービスがギャラリー展示「au Gallery」で紹介されている。市販化されなかった貴重なコンセプトモデルも含めて、すべてのKDDI携帯電話・スマートフォーンのラインナップが壁面いっぱいに展示されている姿は圧巻。たとえば、2003年に発表「info.bar」、ファッション性をボディの下半分を90°回転させるとキーボードが現れるユニークな携帯「apollo」、au初のAndroid搭載スマホを目指した「SUPER INFOBAR」などもみられる。また、「au Historical Road」では、発足以降、業界で初めて“ガク割”や“パケット定額制”などの料金プランを導入したり、“着うた”や“LISMO”など音楽配信をはじめ、携帯関連サービスを拡充させてきた試みも紹介されており興味深い。
<将来に向けたKDDIの取り組みー5Gの世界―>


最後のDゾーンのテーマは「au 5G」。2020年3月からau 5Gがスタートしたが、ここでは5Gを活用した最新の実験的コンテンツを体験できる。たとえば、5Gのスマホとスマートグラス「NrealLight(エンリアルライト)」を使っての映像視聴、画面を目の前に出現させてゲームや映像を楽しめるAR体験などである。また、ヘッドマウントディスプレイなどを装着することなく、高精細な3Dコンテンツを裸眼で立体的に視聴できる「3Dホログラム」、スマホ上に現れるドアを抜けると、360°の別世界が広がる“疑似散歩” など近未来のコンテンツを遊びこころで体験できるという。

館側の説明では、KDDIは携帯電話を売っている会社というイメージが強いかもしれないが、それだけではなく、光海底ケーブルの敷設・保守・運用や、山間部・砂漠地帯などの通信の実現、社会貢献など通信にまつわるさまざまな取り組みを行っている。未来を開く一歩を人と人を通信でつないできたKDDIの全体の姿をミュージアムで知って欲しいとのべている。ちなみに、館内のエクスビション展示では「南極観測の世界」をARジオラマで紹介しており、日本の昭和基地での隊員の活動をリアルに見ることができるという。
・参照:KDDI MUSEUM | KDDI株式会社 展示エリアのご紹介ttps://www.kddi.com/museum/exhibition/
・参照:『KDDI MUSEUM』を現地レポート!au歴代モデルや国際通信の歴史(KDDI トビラ)https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210409/3063.html
・参照:国際電信電話 – Wikipedia
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♣ KDDIパラボラ館(KDDI山口衛星通信所)
所在地:山口県山口市仁保中郷123 083-929-1400
HP: https://www.kddi.com/parabola/


→「KDDI山口衛星通信センター」は山口県にKDDI設置した日本最大の衛星通信施設。敷地には、国際通信用の衛星インテルサット・インマルサットとの交信用のパラボラアンテナが約20基並んでいる。この一角に1982年に開設されたのが見学用施設「KDDIパラボラ館」。ここでは、衛星通信、国際通信のしくみ、海底ケーブル通信などについて学ぶことができる。展示では、衛星通信の説明パネルのほか、衛星を宇宙に送るアリアンロケット、各国を結ぶ光海底ケーブル網図、海底ケーブル敷設船の模型、通信用のパラボラアンテナなどを見学できる。



・参照:KDDIパラボラ館 https://www.denwakyoku.jp/KDDI-parabola.html
・参照:KDDI山口衛星通信センター – Wikipedia
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♣ 門司電気通信レトロ館
所在地:福岡県北九州市門司区浜町4番1号 Tel. 093-321-1199
HP: https://www.ntt-west.co.jp/kyushu/moji/


→ 当電気通信レトロ館は、1924(大正13)年、「逓信省門司郵便局電話課庁舎」の建物を利用して開館した電気通信の歴史館。館内には、電信・電話の発展の中で活躍してきた古い設備や過去を語る貴重な史料などを展示している。通信技術が飛躍的な進展を遂げる中、この歴史の価値を知り、歴史的遺産として保存し次の世代へ受け継ぐことを目指して設立したという。会場では、初期の電話機、電信・電報の機器、大正期の電話交換機などが展示されているほか、電話交換手体験、モールス信号などの体験もできる。建物自体も貴重で、近代化産業遺産群、景観重要建造物(北九州市)にも選ばれている。


・参照:門司電気通信レトロ館 施設案内 (NTT西日本九州支店)https://www.ntt-west.co.jp/kyushu/moji/facility/
・参照:門司電気通信レトロ館 展示品・保存品 https://www.ntt-west.co.jp/kyushu/moji/collection/
・参照:NTT西日本|電気通信レトロ館(電話局の写真館)https://www.denwakyoku.jp/moji-retro.html
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♣ 無線歴史展示室(横須賀リサーチパーク)
所在地:神奈川県横須賀市光の丘3番4号 Tel. 046-847-5000
HP: https://yrp.co.jp/exhibitionhall/


→ 無線歴史展示室は、横須賀リサーチパーク(YRP)の中に開設された日本の無線通信の歴史について戦時の功績と共に紹介する通信博物館。ここには、ペリー来航で紹介された無線通信機から数えて今日の5G通信に至る無線通信の歴史と系譜を示す貴重な品々が展示されている。展示ゾーンには、無線通信の誕生、ラジオ放送の始まり、真空管の発達の歴史、無線通信機の発達の歴史、半導体の誕生と発達、携帯電話の誕生と発達などが時代別に紹介されている。


展示品の中には、送信 のインダクション・コイル、受信機の コヒーラ検波器、三六式無線機 のレプリカなどがある。
ちなみに。須賀リサーチパーク(YRP)は、無線情報通信技術(ICT)分野の企業・研究機関が多数集積する国内最大級の研究開発拠点であり、1997年の開設時には、世界標準の携帯電話の研究開発における中心的な役割を果たしている。
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♣ UECコミュニケーションミュージアム(電気通信大学)
東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 0424435296
HP: https://www.museum.uec.ac.jp/


→ 電気通信大学内にある通信技術博物館。電気通信大学は、1918年に無線通信技術者の養成機関として創設された無線電信講習所を起源とする大学。このミュージアムは1998年に大学内に歴史資料館として発足したもの。第一展示室から第7展示室まであり、それぞれ電気通信に関する歴史資料が展示されている。 エジソン蝋管蓄音機(1911年製)、カシオ製リレー式計算機などが修復して動態展示されている。また、日本化学会から化学遺産として認定された電通大開発のNMR分光分析用電磁石、通信実技演習室で使われていた電鍵やモールス符号訓練用印字機、スウェーデン科学技術博物館から寄贈されたリーベン管など、世界に誇る真空管のコレクションをもっている。
初代帆船日本丸の無線送信機を中心に構成した外国航路船の無線室を擬した一角も見どころという。


・参照:UECコミュニケーションミュージアム(アイエム[インターネットミュージアム] https://www.museum.or.jp/museum/113830
・参照:日本化学会 ・第10回化学遺産認定https://www.chemistry.or.jp/know/heritage/10.html
・参照:UECコミュニケーションミュージアム | JA1CTV業務日誌
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♣ 旧軍無線通信資料館
246-0032 横浜市瀬谷区南台1-21-4 Tel:045-301-8044
HP: http://www.yokohamaradiomuseum.com/


→ 旧日本軍の使用していた無線通信機器を解説展示する通信博物館。太平洋戦争終結後。旧日本軍通信機器の大半は破棄、解体処分となったが、関連官庁、アマチュア無線家の手元に僅かに残された。しかし、戦後55年、これら歴史的通信機器をかえり見る者は少なく殆どの機材は保存されることなく破棄される運命にあった。これらの現状を憂い、有志の間で機器の保存、研究、展示を目的とした資料館を作ろうとの声がもちあがり、結果設立されたが、この「旧軍無線通信資料館」。ここには、歴史的な旧陸海軍無線機材類が多数収蔵・展示されており、日本の通信技術の成果を伝える重要な施設となっている。



展示品としては、海軍電波探信儀関連機材、海軍零式艦上戦闘機無線機材、陸軍野戦用無線機材、陸軍対空・降下部隊用無線機材など貴重なものが並んでいる。
・参照:旧軍無線通信資料館展示物http://www.yokohamaradiomuseum.com/tenjitop.html
・参照:横浜旧軍無線通信資料館掲示板 http://www.yokohamaradiomuseum.com/cgi-bin/imgboard.cgi
・参照:横浜旧軍無線通信資料館に行ってきた(2015.11.14 はまっこラヂヲ通信)https://sawapon308.blog.fc2.com/blog-entry-657.html
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♣ 松代通信記念館 (閉館中)
所在地:長野市松代町松代1446−6 (象山記念館内) Tel. 026-278-2915
・参照:https://www.denwakyoku.jp/matsushirokinenkan.html



→ 旧松代藩士佐久間象山没100年目にあたる1964年)、地元有志により「象山先生100年祭奉賛会」が設立され、同会により解説されたのが、この(「象山記念館」。記念館には象山の愛用品や書のほか、、1849年(嘉永2年)に象山がこの松代で日本初の電信実験を行ったことや、小松謙次郎や樋畑雪湖ら日本の通信・郵便事業の発展に貢献した人物を松代町から輩出していたことから、通信・郵便関連の資料が二階展示室「松代通信資料館」に設けられた(後に閉館)。展示品が他で保存展示されることを望む。また、関連で記念館の近くには「日本電信発祥之地碑」が建てられている。



・参照:象山記念館 – Wikipedia
・参照:象山記念館(信州松代観光協会)https://www.matsushiro-kankou.com/spot/spot-607/
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♣ てれふぉん博物館
所在地:一般非公開(大阪市住吉区内?)―見学はメールにて案内で対応 ―telephone-museum@ymail.ne.jp
HP: http://telephone-museum.seesaa.net/


→ 個人の収集による古い電話機に関するミュージアム。古い電話機の由来については、わからなくなってしまったことも多いようだ。忘れられた電話の歴史を掘り起こし、後世に伝えるべく資料を収集・研究、展示するようになったと開設者の弁。 展示は、明治22年製ガワーベル電話機(日本における電話交換創業時の電話機)、明治30年製ソリッドバック磁石式壁掛電話機(最初期のソリッドバック電話機)、明治35年製グースネック共電式壁掛電話機(京都で本邦初の共電式導入時の電話機)など貴重な歴史的電話機が展示されている。見学は標記のメールにて対応するとのこと。
・参照:住所非公開…謎の「黒電話博物館」訪問記(Withnews記事)https://withnews.jp/article/f0170228001qq000000000000000W06210701qq000014768A
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♣ 無線機歴史博物館(インターネットのブログ・ミュージアム)
HP: http://www.seidensha-ltd.co.jp/~seiden/rekishi.html


→ 短波(HF)帯を中心にしたアマチュア無線用機器が、アナログからデジタルへと技術が変化している昨今、アナログ時代を中心に写真と独断コメントによる無線機歴史博物館」を開設したと紹介されている。無線機から垣間見える、その時代背景と時の流れをみて欲しいという。1950~70年代の製品を中心に展示。無線通信機器の現状、性能、特質、当時の値段などの解説紹介がある。
・参照:http://www.seidensha-ltd.co.jp/~seiden/ncx5_main.html
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<参考資料>
・井上伸雄「情報通信技術はどのように発達してきたのか」ベレ出版
・福島雄一「にっぽん無線通信史」朱鳥社
・田村武志「図解 情報通信ネットワークの基礎」共立出版
・瀧本往人「無線メディア通史」工学社
・石原藤夫「国際通信の日本史」東海大学出版会
・武田晴人「日本の情報通信産業史」有斐閣
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(通信 了)
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