ー 日本人の木造文化の背景と森林資源利用の歴史を訪ねるー

日本の国土の6割以上が森林であるといわれている。日本人は、この豊かな森林資源によりこれまで歴史的に様々な木造り文化を築いてきている。寺院などの木造建築、住居や建材、道具や調度品などあらゆるものに木材が使われ、日本独自のものづくり技術を発展させた。そして、近年では環境保全の面でも森林の価値が見直されている。 そこで、今回のセクションでは、日本人が、どのようにこの豊かな林産資源を活用し生活文化を創り上げてきたか、どのように木造文化の技術を磨いてきたか、どのようにこの貴重な資源を保全し守ろうとしているかを、各地の「木の博物館」「森の郷土博物館」「林業試験所資料館」などを通して見たみたい。
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(森林文化・林業)
♣ 木の博物館・木の保存館
所在地:福島県東白川郡塙町伊香字松原160-13 Tel. 0247-43-1480
HP: http://xn--u9j446hssnltk9g1c.com/
・参考:https://www.tif.ne.jp/jp/entry/article.html?spot=5068


→ 日本で木の特性や良さの理解を進めようと設立した木の博物館。樹齢数百年の珍しい広葉樹60種、約300点が展示されている。館では手作り木工芸品の販売をしているほか、家具作り体験も推進。また、漆の木の植林から育林・採取・塗り、文化財や伝統工芸士などに漆の提供も行っている。特に長さ3メートル、幅150センチ以上の欅や楓の木盤などがびっしりと展示されている。
・参照:木の博物館・木の保存館(アイエム[インターネットミュージアム] https://www.museum.or.jp/museum/1201
♣ 木の博物館・木力館
所在地:埼玉県さいたま市岩槻区新方須賀558−2
HP: https://www.wood-power.com/


→ 木力館は、材木業を営む経営者が、桧、杉、もみなど国産の天然木で作った木造建築の博物館。木の総合情報発信館として建物自体が展示施設となっている。木が生み出す、香りと温もりに触れて、木のすばらしさを体感で感じて欲しいと開設したという。螺旋階段のカーブは「曲げた」ものではなく、太い木材からパーツをひとつひとつ熟練の大工の手刻み(のみ・カンナ等の加工)で削り出して作り上げられている。建物全体は伝統の「通し貫(とおしぬき)工法」を用いており、構造躯体(骨組み)には金物等は使っていない。構造躯体(骨組み)はもちろん、壁や床、窓枠等も全て木でできており、断熱材や新建材といった化学製品は使用していない。博物館を建築した館長大槻忠男の「木の良さを知って頂きたい」との思いが伝わってくる展示施設である。



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♣ 森の科学館(森林総合研究所)
東京都八王子市廿里町1833-81森林総合研究所多摩森林科学園内
HP: https://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/visit/museum.html


→ 森林に関わる研究成果を一般に公開展示するための施設。森林総合研究所多摩森林科学園内に設けられている。館内では、パネルや映像、各種資料を展示し、森林講座も開催している。建物は極力金属を少なくし、多様な種類の加工方法の木材を使った木材の利用法の展示物となっている。材鑑標本(樹木の幹の標本)、樹木から抽出した空気浄化剤の紹介、大きなモミの木の輪切り、タネの引き出し、各種木材の重さ、木質材料(集成材、ボードなど)、木から出る音、葉の形や動物についての解説がある。
ちなみに、多摩森林科学園は、1921年(に宮内省帝室林野管理局林業試験場として発足し、2021年で100周年となる。




・参照:森の科学館みどころ)YouTube動画集):https://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/kengakuannai/midokoro/youtube.html
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♣ 森林・林業学習館
所在地:インターネットのため特定なし
HP: https://www.shinrin-ringyou.com/

→ 森林・林業の現状、森林生態系等に関する学びの場としてインターネットで発信している学習博物館。「人文系データベース協議会」が森林・林業分野のデータベースの一つとして開設したもの。一般向けに写真、グラフなどを掲載し、直観的に理解が進むように平易なことばによる説明がなされている。内容は、日本の森林、森林の定義と区分、森林の公益的機能、日本の林業の現状、林業という仕事、間伐、日本は木の国、木材の構造と性質、木材と環境、木材と住環境、木のはなし(針葉樹・広葉樹)、世界の森林、森林生態系」炭素とCo2の循環、森林と環境問題、日本の山、森の鳥、トピックスとして「森の課題」、「日本の木」、「森のことば」、「森のふしぎ」、「森とひと」等となっている。

・参考:https://www.jinbun-db.com/database/archives/62953
・参考:一般社団法人日本木材学会― 化石資源から木質資源へhttps://www.jwrs.org/
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♣ さいたま緑の森博物館(通称:みどり森)
所在地:埼玉県入間市宮寺889-1 Tel. 04-2934-4396
HP: https://saitama-midorinomori.jp/


→ 狭山丘陵に残る武蔵野の里山環境を展示としたフィールドミュージアム。1960~80年代に開発等から狭山丘陵を保全し、緑や生き物とのふれあいの場を取り残そうという声の高まりを受けて森博物館が開設。他の博物館と大きく異なる点として、大きな建物や展示室はなく屋外の里山の自然そのものが展示物となっている。定期的な自然観察会や稲作体験教室、雑木林体験教室も開催している。環境保護市民運動団体「狭山丘陵の自然と文化財を考える連絡会議」と「狭山丘陵を市民の森にする会が中心になって、狭山地域の自然と環境保全を実現しようと埼玉県に「森の博物館」設立申請して実現した。

・参照:さいたま緑の森博物館 – Wikipedia
・参照:どんなところ?―さいたま緑の森博物館 https://saitama-midorinomori.jp/?page_id=24467
・参照:園内情報 | さいたま緑の森博物館 https://saitama-midorinomori.jp/?page_id=24469
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♣ 府中市郷土の森博物館
所在地:東京都府中市南町6-32 Tel. 042-368-7921
HP: https://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/


→ 郷土の森博物館は、府中の中にある建造物を含む森全体を一帯とした野外博物館。多摩川の是政緑地(府中市郷土の森公園)に隣接した自然豊かな環境を活用して設立された。園内は「府中の縮図」を意図してゾーニングしており、府中市の中心部にあるケヤキ並木や甲州街道、府中崖線(ハケ)に見立てた通りや地形を骨格として、甲州街道沿いにあった町屋、茅葺農家、さらに田んぼや畑、雑木林を配置している。また、水田や稲作農家、水車小屋などを配置している。博物館本館には府中の歴史・文化・自然を学べる常設展示室を配置している。



・参照:府中市郷土の森博物館 – Wikipedia
・参照:府中市郷土の森博物館(公益財団法人府中文化振興財団)https://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/
・参照:常設展示室|公益財団法人府中文化振興財団 https://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/tenji/1000108/index.html
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♣ 青森市森林博物館 (青森森林組合連合会)
所在地:青森県青森市柳川2-4-37
HP: https://www.aomori-shi.shinrinhakubutsukan.jp/


→ 青森の郷土を軸にした緑や森林と人間の結びつきをテーマとした森の総合博物館。明治41年に建設された旧林野庁青森営林局庁舎の本館を利用し、1982年に博物館として転用して開館したもの。建物は当時の建築技術を知る上で貴重な建物とされ、青森市の指定有形文化財となっている。展示は、一階が木と森について、森林の生態、森林と人間のかかわりなどをテーマにした展示室、二階は、山スキー、青森ヒバについての展示室がある。また、敷地内に、木材加工の体験コーナーと森林鉄道保存館がある。







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♣ 緑の情報館(北海道立総合研究機構 林業試験場)
北海道美唄市光珠内町東山(林業試験場庁舎敷地内)Tel. 0126-63-4164
HP: https://www.hro.or.jp/forest/research/fri/koho/johokan.html


→「緑の情報館」は、森林や樹木、みどりの環境についてのさまざまな情報や林業試験場の研究成果を展示・紹介する林業試験所の施設。森林の多面的機能、森林の生物多様性の保全、林業の健全な発展、みどり環境の充実や緑化樹関連産業の振興など研究の4つの基本方向に従って研究成果を紹介している。(写真参照)

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♣ 森林資料館・森林記念館(北海道大学苫小牧研究林)
https://tomakexpforest.jimdofree.com/


→ 北海道大学苫小牧研究林は、明治37年に北海道大学農学部の研究林として創設された林業研究施設。この中に、森林資料室と森林記念館がある。森林資料館は1977年に建築されたもので、当研究林や他の北大研究林において採集されたものを収蔵している。所蔵品の多くは貴重な生物標本や林産加工標本で所蔵点数は約4400点になる。また、森林記念館は1935年に標本貯蔵室として建築され、その後1963年に白壁の新館が増築された。鉞や馬橇など林業関係資料や古い道具類を展示している。



・参照:北海道大学 苫小牧研究林https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kankojoho/kankoannai/kenkyurin.html
・参考:森林・木材展示施設 ⑮ https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kankojoho/kankoannai/kenkyurin.html
<参考>


苫小牧研究林は約330年前に噴火した樽前山の火山灰の上に立地。面積2,715haのうち25%が人工林で、残りはミズナラ・ カエデ類などの広葉樹林で構成されており、平坦な地形と林床にササ類が少ないのが特徴。また、ここは都市近郊林と位置づけられ、林業生産・休養緑地・環境保全機能を織り込んだ「都市林施業」を行っている。調査研究への支援体制も整備されつつあり、北大だけでなく国内外の研究者がこの研究林を利用しているという。(see: 北海道大学 森林圏ステーション https://www.hokudaiforest.jp/
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♣ 東京大学北海道演習林 森林資料館
所在地:北海道富良野市山部東町9番61号 Tel. 0167-42-2111
HP: https://www.uf.a.u-tokyo.ac.jp/hokuen/ippan/03_shiryou.html


→ 北海道の東京大学森林資料館は、1927(昭和2)年に建てられた麓郷作業所の建物を資料館として復元したもの。館内には、演習林産の丸太標本、50年以上にわたり演習林が取り組んだ森林管理手法「林分施業法」の解説など、さまざまな展示を常設している。資料館の裏山には白鳥山散策路が設置されている。
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♣ さわれる林業博物館(奈良県立吉野高等学校林業博物館)
所在地:奈良県吉野町飯貝680 Tel. 0746-32-5151
HP: https://www.facebook.com/TheForestryMuseum?locale=ja_JP
HP: https://www.museum.or.jp/museum/5800


→ 吉野高等学校は、吉野木材資源の研究・開発に貢献する人材の育成を目指した「吉野林業高等学校」(明治35年)を前身とする県立高校。この一角に歴史を反映した「林業博物館」がある。ここには、高校とは思えないほど貴重な吉野の木材標本・木材加工標本・製材製品標本・伐木運材用具・古文書・民芸品など学術的に極めて価値の高い多くの資料が収蔵されている。例をあげると1000年以上の年輪を刻んだ杉檜の標本、樹木の化石、吉野の林業を記録する歴史写真、法隆寺建造に使われた木材などがある。






・参照:奈良県立吉野高等学校 https://www.e-net.nara.jp/hs/yoshino/index.cfm/6,html
・参照:吉野高校林業博物館: 森林ジャーナリストの「思いつき」ブログhttp://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2008/05/post_3c8a.html
・参照:吉野高校へー 小林てるよのブログhttps://ameblo.jp/teruyo-k/entry-12520548263.html
・参照:林業博物館にある肖像画と法隆寺の・・: 森林ジャーナリストの「思いつき」ブログhttp://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2020/03/post-65a65c.html
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♣ 仁別森林博物館 (秋田市)
所在地:秋田県秋田市仁別務沢国有林22林班 Tel. 018-827-2322
HP: https://www.akita-yulala.jp/see/200010149


→ 仁別森林博物館では、仁別の自然に関する資料、林業で利用した機械類や森林鉄道で実際に活躍していた機関車を展示している。日本三大美林・天然秋田杉についての説明コーナーが充実しており、周辺には樹齢200年以上の天然秋田杉林もあり散策ができる。


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♣ 林業機械ミュージアム(林業機械化協会)
所在地:東京都文京区後楽1-7-12 Tel. 03-5840-6217
HP: https://www.rinkikyo.or.jp/machineA.html



→ 林業機械化協会が運営する林業に関わる機械類各種を紹介する施設。伐倒・集積などの高性能林業機械、集材機やチェンソーなどの従来型林業機械を紹介している。
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♣ 徳島木のおもちゃ美術館 (徳島県)
徳島県板野郡板野町那東字キビガ谷45-22 Tel. 088-672-1122
HP: https://www.tokushima-toymuseum.com/tokushima-forestry


→ 林業の振興をはかり、木材を積極的に利用していくために設立された「”木育”ミュージアム」。(徳島の)豊かな森林は、美しい里山の風景を作り上げ、災害から暮らしを守り、木材などの林産物を生み出すなど、私たちの生活にさまざまな恩恵をもたらしている。こうした木から受ける恩恵や木の知識、木の文化を、遊びを通じて考え、学ぶことができる美術館としている。県産材をふんだんに使用した館内の内装、家具、おもちゃに囲まれた空間での体験を通じて、徳島県の森林・林業・木材産業に触れることを期待しているようだ。



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<参考>
♣ 北海道にある森林・林業・木材・木製品の展示施設
HP: https://rinsan-fukyu.jp/wp-content/uploads/woodyage/2022/202210C.pdf

→ 北海道内には,北海道博物館(札幌市),国立アイヌ民俗博物館(白老町)をはじめとして,歴史,科学,動植物,美術など多様な博物館・展示施設が数多くあり,その数は3221)とされています。ちなみに,全国には5,751あり,都道府県別では長野県が340で最も多く,次いで北海道,東京都(299),愛知(218)の順となっている。


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♣ 全国木材協同組合連合会
所在地:東京都千代田区一番町25番地 全国町村議員会館6階
Hp: https://www.zenmokukyo.jp/

→ 全国木材協同組合連合会(略称全木協連)は、全国の木材業、木材加工業および木材販売業者が組織する協同組合およびその連合会を会員とする全国組織です。当連合会は、会員の相互扶助の精神に基づき、会員およびその組合員のための必要な共同事業を行い、もって会員およびその組合員の自主的経済活動を促進し、かつその経済的地位の向上に努めることを目的としています。 全国木材協同組合連合会-会員名簿あり。
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(了)