ここでは日本のガラス製作の現状と発展の歴史を検証すると共に、各地で特色あるガラス高原品が作られた過程、独自の美術品として展示している博物館を紹介している。
♣ AGC横浜テクニカルセンター )
所在地:神奈川県横浜市鶴見区末広町1-1 Tel.045-503-7100
HP:https://www.agc.com/innovation/yokohama/index.html


→ テクニカルセンターでは、AGC(旭硝子)の素材や技術開発の現状を紹介展示している施設。2021年に横浜市神奈川区のAGC中央研究所と統合し、名実ともにAGC株式会社の技術開発の中心拠点となっている。建材用板ガラス、車載ディスプレイ用カバーガラスの製造も行っており、研究段階から生産・出荷までが揃ったユニークな拠点でもある。


施設内には「AO/AGC OPEN SQUARE」が設けられており、4階のAO Studio では、最先端の素材が集められていて技術や機能に触れることができる。そこではアイデアを発見してプロトタイピングして想いを形にする場であると説明されている。また、ガラスの溶ける熱量を感じられるデモの他、各種3Dプリンターを導入したAMラボ、VR/AR/MRといったデジタル機器でプロトタイピングするXRラボといった最新設備も備えている。あくまで顧客用の施設ではあるが、機会があれば訪問してみたい施設である。
参照:AGCの協創空間「AO」に、素材の可能性と出会う場( Communication Design)https://www.hakuten.co.jp/story/agc_private_exhibition


♣ 工部省品川硝子製造所(明治村)(史跡)


→ 明治政府による板ガラスやガラス瓶の製造工場建屋。西欧の技術導入によるガラス国産化努力が示されている。
ちなみに、明治政府は、明治初期、洋館建設促進などのため日本初の板ガラス製造工場「興業社」を設立。その後、工部省は、輸入に頼っていた板ガラスの国産化を積極的に進める必要から官営の「品川硝子製造所」を創設。これは硝子産業の育成と技術者の養成を目的とした模範工場であった。それまで日本では切子ガラスやジャッパン吹きとよばれるガラス製の吹竿等を使った小振りで華者な和製吹きガラスが主流で、板ガラス、食器などを大量に生産することはできなかった。


この「製造所」を軸に、多くの試行錯誤を経ながら新技術の導入や優れた技術者の育成が図られ、後の日本の近代的硝子産業が育つことになった。この品川ガラス製作所で初の日本人技師となり洋式ガラスの技術を指導し、近代ガラス工芸の基礎を築いた人物として佐賀の藤山種廣が知られる。この記念すべき工業ガラス製作発祥の史跡が明治村に移設された「工部省品川硝子製造所」である。
・参照:近代ガラス工業の発祥と品川(品川歴史館解説シート)https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/jigyo/06/historyhp/pdf/pub/kaisetsu/cs16l.pd
・参照 藤山種廣 – Wikipedia
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♣ 道後ぎやまんガラスミュージアム
所在地:愛媛県松山市道後鷺谷町459-1 Tel.089-933-365
HP: https://www.dogo-yamanote.com/garden/museum/


→ 道後温泉本館から徒歩3分の水と緑あふれる庭園に囲まれた美術館。 館内は赤と黒を基調にしたモダンな造りの美術館である。 道後温泉本館の象徴、振鷺閣の赤い板ガラスをはじめ、希少な江戸時代の「ぎやまん・びいどろ」や 明治・大正時代の和ガラス作品を約300点展示している。ちなみに、「びいどろ」はポルトガル語でガラスを意味する「vidro(ヴィドロ)」、ギヤマンはポルトガル語でダイヤモンドを意味する「diamante(ジアマント)」が語源とされる。種子島に漂着したポルトガル船を皮切りに、16世紀にこれらガラス製造技術が日本にも伝わり、江戸時代、長崎でガラスの製作が始まった。その後、“宙吹き”、“型吹き”、“切子”などの技法導入によりガラス工芸品(和ガラス)製作技術が発達している。明治近代化の明治6年(1873)には本格的な西洋式のガラス工場「興業社」(後の品川硝子製作所)が東京・品川に設立され、工業品としてガラスの日用器がごく普通に作られるようになり現在に至っている。この美術館では江戸の和ガラスを中心に、江戸以来の時代を通じたガラス工芸品製品が見られるという。



・参考:日本工芸堂;日本のガラス工芸の歴史「びーどろ」と「ぎやまん」の違いhttps://japanesecrafts.com/blogs/news/vidro-giyaman?srsltid=AfmBOoqiUYzXiHhHX-pIfzn1uadNroIXHydU5VujdAKGmzEkhZTvDrPp#1
・参考:「ぎやまんの歴史|道後ぎやまんガラスミュージアムhttps://www.dogo-yamanote.com/garden/museum/history.html
♣ ガラスミュージアム (黄金崎クリスタルパーク)
所在地:静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須2204-3 Tel.0558-55-1515
HP: https://ikoyo-nishiizu.jp/crystal/museum/


→ このガラスミュージアムは現代ガラスをテーマの美術館、自然光を一部取り入れた、天井の高い常設展示室には国内外の優れた現代ガラス作品、約40点を展示している。
ガラスと光が織りなす幻想的な空間が魅力となっている。企画展示室では、現代ガラスに焦点を当てた独自の企画展も開催している。「現代ガラス」とは、主に1960年代以降に広まった自由で独創的なガラス芸術のことを指し、アーティストが小型の熔解炉を使って、みずからの意志で自由にガラス作品をつくる「スタジオ・グラス運動」と呼ばれる活動である。


参考:スタジオグラスとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書
参考:日本近現代ガラスの源流 – 富山市ガラス美術館 (toyama-glass-art-museum.jp)
♣ 富山市ガラス美術館
所在地:富山市西町5番1号 Tel. 076-461-3100
HP: https://toyama-glass-art-museum.jp/


→「ガラスの街とやま」を目指し、30年にわたり富山市が収集してきたガラス美術館所蔵の現代ガラス作品を展示している。社会の変化や次々に生み出された新しい価値観に呼応するような作品群が集まっている。富山ゆかりの20名の作家たちによる作品およそ50点をパブリック・スペースに展示。富山の地でガラス制作を学んだ作家たちは、うつわや、オブジェ、彫刻といった多様な表現により日本のみならず世界で活躍している。



♣ (巨大万華鏡の)三河工芸ガラス美術館
所在地:愛知県西尾市富山町東郷5 Tel.0563-59-3334
HP: https://mikawakougei.com/


→ 従来の美術館とは全く違ったコンセプトで作られたガラス美術館。人の手が作り出した「生」の作品が魅力で、作品と人が一体化する斬新なアプローチを試みたとする。人が入れる巨大万華鏡のある体験型ミュージアムで、 2000年ギネスに認定された世界最大級の万華鏡をはじめ、独創的なアートで知られる体感型ミュージアムとなっている。

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♣ 磯工芸館(薩摩切子)

鹿児島県鹿児島市吉野町9688−24
HP: https://www.kagoshima-kankou.com/guide/12252
→薩摩切子の作品展示ギャラリーで建物は国の登録有形文化財。薩摩切子工場に隣接しており工場見学も可能。
(薩摩切子とはー歴史と特色―)

→ 切子(きりこ)はガラスの装飾加工法の名称およびこれによる製品(切子ガラス)を指している。ガラスの表面に、金属製の回転砥石を研磨剤とともに押しつけて、溝を入れたり研磨することで独特のデザインを施していく技法。代表的な日本の代表的な切子の工芸品の種類として江戸切子と薩摩切子がある。
このうち「薩摩切子」は、クリスタルガラスの深い輝きと精巧なカット技術による「ぼかし」(「薩摩ぼかし」と呼ばれるグラデーション)が特徴とされる。この「薩摩切子」の歴史をみると、江戸末期、島津藩の島津斉彬が藩の近代化事業「集成館」の一つとしてガラス工場を創設したことに始まるとされる。当時、薩摩藩は「紅」の発色に日本で初めて成功し、その美しい赤地に繊細なカットを施したガラス作品は「薩摩の紅ガラス」とよばれ、藩内外で愛好されたという。しかし、島津斉彬の急死、1863年の薩英戦争による工場の消失でガラスの製作は頓挫、「薩摩切子」は一端途絶えてしまう。それから約一世紀たった1980年代、ようやく薩摩切子復活の動きが鹿児島で始まることとなる。そこでは、江戸切子に学びつつ色ガラスをかぶせる技術を独自に開発し、新しい「薩摩切子」が再生されている。この新しいデザインが加わった「薩摩切子」は、現在、鹿児島の伝統的なガラス工芸品として人気を集め珍重されている。

・参照:薩摩切子とは(日本工芸堂):https://japanesecrafts.com/collections/satsumakiriko
♣ 薩摩切子工場 (仙巌園 – 薩摩藩 島津家別邸)

鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1 Tel. 099-247-1551
HP: https://www.senganen.jp/how-to-walk/adjacent-facility/shimadzu-satsuma-kiriko-glassworks/

クリスタルガラスの深い輝きと精巧なカット技術による「ぼかし」の美しさが特徴の薩摩切子の製作工程を見学できる「薩摩切子工場」。そこでは、伝統を受け継ぐ職人たちの熟練した技が示されている。切子工場は、溶けたガラスから器の型を作る「吹き場」と、グラインダーを使って模様を彫り込んでいく「カット場」、そして最後の仕上げとなる「磨き」の3つのエリアで構成されている。



♣ すみだ江戸切子館
所在地:東京都墨田区太平2-10-9 Tel. 03-3623-4148
HP: https://www.edokiriko.net/


→ すみだ江戸切子館は、日本の伝統工芸「江戸切子」をご紹介する墨田区認定の工房ショップ。切子作家の逸品から日常に使われる器やギフトなど、数々の江戸切子の「技」の品々を常時展示販売している。ショップ内は、江戸切子の歴史、制作工程や古くから使われてきた道具類を展示しており、窓越しで職人の技を直接見学できる。


(江戸切り子とはー特徴と歴史―)

→ 江戸時代から受け継がれたガラスの表面に文様を施した工芸品。明治時代、ヨーロッパのカットグラス(切子)の技法を取り入れることで独自の工芸技法が確立した。江戸切子独自の文様は20種類ほどあり、日本古来から身近にある花や植物などの自然がモチーフとされる。2002(平成14)年に国の伝統的工芸品に指定。日本を代表する工芸品のひとつとして、東京都江東区・隅田区を中心に、現代の職人たちがその技術を継承している。江戸切子の魅力は、その輝きと細かい文様にあるという。
当初は透明だった江戸切子であったが、現在のような色被せガラスが使われるようになったのは「薩摩切子」の影響だったという。薩摩藩により推進され、ガラスの着色方法を独自に開発してきた薩摩切子だったが、その技術は西南戦争前後に途絶えてしまった。しかし、薩摩切子の職人たちは、江戸へ向かい、江戸切子の職人として活躍。その技術は江戸職人に伝わり、青や赤の被せガラスの技術が定着して現在のような切子となったという。


・参照:江戸切子とは(日本工芸堂)https://japanesecrafts.com/collections/edo-kiriko?ls=ja
♣ すみだ和ガラス (廣田硝子)

所在地:東京都墨田区錦糸2-6-5 Tel.03-3623-4145
HP: https://hirota-glass.co.jp/sumida-waglasskan/

→ 明治32年創業、東京で最も歴史がある硝子メーカーの一つ、廣田硝子株式会社の所蔵品を展示するガラス美術館。1930年代頃より以降販売していた懐かしの製造品のほか、会長 廣田達夫が自ら蒐集した和ガラスやヴィンテージガラスのほか、成形金型などの製作器具、専門書などを展示。+++++++++++
(リストのみ)
♣ 石とガラスの博物館 (https://kofu-tourism.com/spot/241)
所在地:山梨県甲府市貢川1-1-7 Tel.055-228-7003
HP: https://kofu-tourism.com/spot/241
♣ ガラス工芸博物館
所在地:三重県伊賀市柘植町5704-1 Tel.0595-45-6810
HP: (https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/matikado/da/detail?kan_id=835226
♣ 箱根ガラスの森美術館
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48 Tel. 0460-86-3111
HP: https://www.hakone-garasunomori.jp/
♣ 妖精の森ガラス美術館【岡山県・鏡野町】
所在地:岡山県苫田郡鏡野町上齋原666-5 Tel. 0868-44-7888
HP: https://fairywood.jp/
♣ 琉球ガラス村 Ryukyu Glass Village Gallery【沖縄県・糸満市】
所在地:沖縄県糸満市字福地169番地 Tel. 098-997-4784
HP: https://www.ryukyu-glass.co.jp/
♣ タキナミグラス博物館
所在地:東京都墨田区太平1-18-19 Tel.03-3622-4141
HP: http://www.shitamachi.net/joho/0104-1401.htm
(以上)