かつての造船王国日本を支えた有力産業である造船、重機械工業主要メーカーの起源をなす歴史的施設の紹介、また、現在の重工業メーカーの現在の取り組み、発展の歴史を示す史料館などを紹介する。
(黎明期の造船と工業機械の歴史史跡)
♣ 三菱重工業長崎造船所史料館(世界遺産)
(https://www.at-nagasaki.jp/spot/151)
長崎県長崎市飽の浦町1-1 Tel.095-828-4134


→ 日本の産業近代化に造船が果たした役割を伝える貴重な史料館である。内部には、幕府が購入した日本最古の竪削盤、日本初の国産蒸気タービン、船舶用ガスエンジンなどを展示。長崎造船所の歴史と日本の重工業発展のあゆみを伝えている。史料館の基となっているのは「旧木型場」、長崎造船内の現存する最古の建物で船舶鋳物を作るための「木型」を製作していた工場。現在では工場としてではなく長崎造船で使われていた工作機械、船舶資材、建造船の歴史写真などを展示する博物館となっている。

館内をみると、1834年に長崎鎔鉄所建設時の岸壁工事に使用された潜水用具「泳気鐘」, 日本最古の工作機械といわれる「竪削盤」(1857)、日本最初の国産陸用蒸気タービン(1908)、長崎造船所工場の支柱に使用した「鋳鉄柱」などが展示されている。また、長崎造船所の歴史を語る写真も豊富で、1870年頃の長崎製鉄所の写真1885年頃の飽ノ浦造機工場、立神第一ドックの模様、最初の鉄製汽船(1887)、1920年代からの「常陸丸」、船艦「日向」、戦艦「武蔵」など往時の姿が偲ばれる。

長崎造船所の歴史をみると、1896年には第一ドック完成、1898年木型場建設、1903年には第二、第三船台完成、1907年、船型試験水槽竣工、1909年には大型クレーン設置、と近代造船所としての陣容を整えていっている。そして、1887年「夕霧丸」(最初の鉄製汽船)、1898年「常陸丸」(大型貨客船)、1908年「天洋丸」(本格的タービン船)、1915年には巡洋戦艦「霧島」の建造に成功している。このように、長崎造船所などを通して、日本の造船技術は飛躍的向上し、僅か50年の間に世界の造船大国の一つまでに成長していったことがわかる。
(参考)(https://igsforum.com/visit-nagasaki-zosen-m-jj/)長崎造船所史料館訪問記
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♣ 三菱重工業下関造船所史料館
(https://www.mhi.com/jp/company/aboutmhi/museum/shimonoseki)
山口県下関市彦島江の浦町六丁目16番1号 Tel.083-266-2111

→ この史料館は下関造船所の創業80年を記念して設立されたもの。下関造船所のルーツ、船の変遷、船の製造過程など時代とともに変遷する建造船の歴史ついて紹介している。 3つのコーナーがあり、「下関造船所のルーツ」、「下関造船所 船の変遷」、「船ができるまで」など、時代とともに変遷する建造船の歴史や、船の特長などについて展示している。
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♣ ヴェルニー記念館(史跡)(横須賀)
(https://www.cocoyoko.net/spot/verny.html
横須賀市東逸見町1-1 Tel. 046-824-1800


→ 記念館は、日本産業近代化の起点ともいえる横須賀製鉄所をつくりあげたフランス人技師ヴェルニーの功績と横須賀製鉄所の意義を後世に伝えるために建てられた施設。現在は米海軍横須賀基地となっている横須賀製鉄所の跡地を対岸に望むヴェルニー公園の一角に位置している。建物の外観は、ヴェルニーの故郷ブルターニュ地方の住宅の特徴を取り入れている。横浜製鉄所の記念品と共に、当時使われた造船大型ハンマーなども展示。
(参考)https://igsforum.com/visit-yokosuka-ironworks-j/ 横須賀造船所跡訪問記
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♣ 戸田造船郷土資料博物館(史跡)
(https://www.city.numazu.shizuoka.jp/kurashi/shisetsu/zosen/)
静岡県沼津市戸田2710-1 Tel.0558-94-2384


→ 幕末、ロシア船ディアナ号が座礁した際に、代船として日本初の西洋型帆船ヘダ号を建造した歴史を記念する史料館。その後、これに関わった船大工が各地でその技術を伝え、日本の近代造船の建造に大きく貢献したとされる。このヘダ号は「君沢型」と呼ばれ、江戸石川島で4隻の君沢型船が建造され、戸田から船大工が派遣されている。また、長州藩(山口県)や田原藩(愛知県)、江戸や大阪へ招かれた船大工たちが、西洋式造船技術を広めていったと伝えられる。現在、駿河湾深海生物館ともなっている。
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(造船、重工業の発展を示す博物館)
♣ 三菱みなとみらい技術館 (三菱重工)
(https://www.mhi.com/jp/company/aboutmhi/museum/minatomirai)
横浜市西区みなとみらい三丁目3番1号 Tel.045-200-7351


→ 三菱重工が、横浜のみなとみらい地区に技術センターを作ったことから、この一部として設立したのが「三菱みなとみらい技術館」。三菱の造船、自動車、鉄道、海洋、航空宇宙などの事業全体を紹介する博物館である。技術館では、三菱重工が現在技術開発を進めている事業、環境エネルギー、深海開発、航空機、宇宙装置・ロケット、交通システムなどを実物、模型、シミュレーションなどで総合的体系的に展示している。三菱重⼯の足跡と現代の技術挑戦をみることができる。なかでも、開発中の国産ジェット旅客機MRJの機体模型、H2ロケットエンジン、有人潜水船「しんかい6500」実物分解展示などは圧巻である。


(参考)https://igsforum.com/mitsubishi-minato-m-jj/ 三菱みなとみらい技術館訪問記
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♣ IHIものづくり館 アイミューズ
(https://www.ihi.co.jp/i-muse/)
東京都江東区 豊洲3丁目1−1(豊洲IHIビル1階) Tel.03-6204-7032


→ IHI(旧石川島播磨重工業)の歴史と沿革や事業を紹介する歴史博物館。明治期の船舶、機関車や橋梁、四国大橋、LNG船、新しくは宇宙開発関連機器など産業・社会インフラ、エネルギー環境関係のプロジェクトを展示。博物館では、1876年、明治期の「石川島平野造船」から始まって、1960年には播磨造船と合併して石川島播磨重工(IHI)となり、タンカーからLNG船、ジェットエンジン開発、橋梁から産業インフラへと事業活動をひろげた開発技術の歴史を丁寧に展示されている。
館内は幾つかのコーナーに分かれていて、IHIの歴史と沿革を示すコーナー、取り組んできた事業やプロジェクト、製作された工業機械、船舶、構造物などが、ほぼ10年ごとの時系列で展示されている。古くは、明治期に作られた船舶、機関車や橋梁があり、昭和年代では、四国大橋、LNG船、あたらしくは宇宙開発関連機器など、日本の産業・社会インフラ、エネルギー環境関係のプロジェクトが数多く解説付きで展示されていて、改めて日本の重工業産業発展の大きな流れを確認できる。
(参考)https://igsforum.wordpress.com/visit-toyosu-ihi-m-jj/ IHIものづくり館訪問記



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♣ 石川島資料館―石川島からIHIへー(東京)


→ 石川島資料館―石川島からIHIへー」は、墨田川沿いの「リバーシティー21」の一角事務所ビルの一角にあり、工場跡地であった石川島(現在の中央区佃)に建てられている。IHI(旧石川島播磨重工業)が地域の協力を得て設立した記念館とされ、江戸時代からの石川島地域社会の成り立ちと来歴、石川島造船所時代からのIHI事業展開が幅広く紹介されている。規模としては小さな施設だが展示内容は非常に充実しる。IHIの技術開発の歴史ばかりでなく、日本の重工業発展、地域社会の変化、特に、造船業発展の歴史がたどれる魅力的な資料館である。
(参考)https://igsforum.com/ishikawajima-shiryo-m-jj/ 石川島資料館訪問記
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(了)