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金属加工の“ものづくり”を伝える博物館(B) 詳細

ー日本伝統の鉄の“ものづくり”の歴史、産地形成などを示す資料館紹介ー <金属加工の技術を伝える資料館> ♣ 燕市産業史料館   (http://tsubame-shiryoukan.jp/index.html) 新潟県燕市大曲4330番地1  Tel.0256-63-7666  → 地場産業の金属加工、特に金属洋食器の生産で知られ燕市で培われた“ものづくり”の技術と歴史を紹介する貴重な資料館。江戸時代のキセルや矢立て、和釘から現在の洋食器の燕ブランドとして確立するまでの金属加工産業の発展を、職人の技と技術の発展の観点から紹介している。江戸時代から現代まで連綿と続く燕の産業の歴史を紹介しています。体験工房館では鎚目入れやぐい吞みの製作、スプーンの酸化発色などモノづくり体験ができまる。 史料館の概要  史料館は、「本館」と洋食器の発展を紹介する「新館」の二カ所からなっている。 本館では、金属産業の歴史と技術、産業風土、技術と伝統がテーマで、作業現場の復元展示、金属工芸製品のギャラリー、煙管・彫金作品のコレクション、鎚起銅器、人間国宝玉川宣夫氏のコレクションが展示されており、新館では、「日本の洋食器食器室」「一般展示室」があり、前者では明治から始まる燕の金属洋食器の歴史を文明開化以降の日本の食文化の変遷と照らし合わせながら紹介、後者では和釘から始まり、金属洋食器・金属ハウスウェアを経て、新素材、新技術を活かした金属加工地へと変わり行く地場産業の歩みを紹介する構成となっている。そのほか、矢立煙管館があり、そこでは丸山清次郎氏が生涯をかけて収集した江戸から明治にかけての“煙管”と“矢立”の一大コレクションがみられる。 +++++++++++++ ♣ 鯖江めがね博物館(めがねミュージアム)   (https://www.megane.gr.jp/museum/) 福井県鯖江市新横江2-3-4 めがね会館  Tel. 0778-42-8311 → 福井県の鯖江は、国内生産フレームの9割以上のシェアを持つ「めがねの産地」として知られるが、この鯖江メガネの100余年の歴史を伝える産業博物館がこの“めがねミュージアム”。 博物館では、めがね作りのルーツとスピリットを示す生産現場風景の展示コーナーや 江戸時代~昭和にかけてのめがねの形の変遷などをご紹介するコーナーなどを設けている。鯖江のメガネは当初、地域農家の副業としてはじめられたものだが、次第に専門の製造者がパーツごとに分業するようになり、まち全体がひとつの大きな工場になるまでに成長し特徴のある地場産業として定着していった。このめがねは、伝統の技を持つ職人の手による日本モノづくり優れた技術のひとつであり、現在は、軽くて丈夫なチタン製めがねを開発・生産をおこなうことで、国際的なめがねの産地としての地位を築き上げていっている。この意味でも、資料館は日本における金属加工の産地形成の歴史を示す貴重な資料館である。参考:(https://www.megane.gr.jp/museum/about/fukuisabae) +++++++++++++++++ ♣ 東京メガネミュージアム    (https://www.tokyomegane.co.jp/museum/)東京都世田谷区若林 1-20-11 東京メガネ本部ビル 3階 Tel. 03-3411-6351  → 「東京メガネ」社が長年かけて収集した数百点のアンティーク眼鏡、ケース、補聴器、光学器類の中から厳選したコレクションなどを展示している。15代将軍徳川慶喜が使用した「天眼鏡」やベートーベンが使用したといわれるものと同型の「ロンドンドーム型集音補聴器」などの珍品もあり、古人のアイディアやチャレンジなど、眼鏡や補聴器の歴史を通し技術の変遷を感じさせる展示が豊富という。 +++++++++++++++++ ♣ 奥州市伝統産業会館 (https://www.andtrip.jp/article/000631.html) 岩手県奥州市水沢羽田町 駅前1丁目109  → 奥州市伝統産業会館は南部鉄器の製造プロセス、鋳造の時実際に使われていた道具や昔の鋳造名品など数多い南部鉄器の貴重な作品を展示する博物館。水沢地方の南部鉄器の歴史は古く、930年前(平安時代の末期)ごろ、藤原清衡が近江の国から鋳物師を、江刺(今の奥州市江刺地域)招いて鋳造を始めたのが鋳物業の起こりと伝えられる。また、江戸時代には、伊達藩の保護政策により「なべ」や「かま」などの日用品を中心とした鋳物の生産地として大きく発展した。昭和時代初期には、日用品の生産が本格化し鋳物産地として有名になっている。第二次世界大戦後、生活様式の大きな変化により鋳物製品の需要が減ったが、現在では、優れた鋳物製品を作るため技術の開発や生産設備の近代化を図っているという。会館では、この歴史を踏まえ南部鉄器の歴史と作品を紹介している。なお、伝統産業会館は南部鉄器館も併設しているので必見。 ・奥州市伝統産業会館 南部鉄器館  (https://iwatetabi.jp/spots/5354/) 岩手県奥州市水沢大手町1丁目1番地  Tel.0197-23-3333  → 地場産業「南部鉄器」に関する資料を多数展示。館内には古今の秀作鋳物の展示や明治初期の工場を忠実に再現したコーナーの他、大型スクリーンによる現在の鋳物制作の工程などが紹介されている。 ++++++++++++ ♣ フェザーミュージアム (https://www.feather-museum.com/) 大阪府大阪市北区大淀南三丁目3番70号  Tel. 0575-22-1923  → 「切る」をコンセプトにカミソリと精密刃物を展示するフェザー社の博物館。ここには、カミソリと精密刃物の展示があり、「切る」ってなんだろうからはじめ、石器時代から未来まで、たくさんの「切る」をテーマにして紹介している。また、フェザー・ヒストリー:フェザー社の過去の製品から最新製品までエピソードも交えて見られる展示スペースも設けている。 … Continue reading

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造船と重工業部門のものづくり博物館 (B)

  かつての造船王国日本を支えた有力産業である造船、重機械工業主要メーカーの起源をなす歴史的施設の紹介、また、現在の重工業メーカーの現在の取り組み、発展の歴史を示す史料館などを紹介する。  (黎明期の造船と工業機械の歴史史跡) ♣ 三菱重工業長崎造船所史料館(世界遺産)   (https://www.at-nagasaki.jp/spot/151) 長崎県長崎市飽の浦町1-1  Tel.095-828-4134 →  日本の産業近代化に造船が果たした役割を伝える貴重な史料館である。内部には、幕府が購入した日本最古の竪削盤、日本初の国産蒸気タービン、船舶用ガスエンジンなどを展示。長崎造船所の歴史と日本の重工業発展のあゆみを伝えている。史料館の基となっているのは「旧木型場」、長崎造船内の現存する最古の建物で船舶鋳物を作るための「木型」を製作していた工場。現在では工場としてではなく長崎造船で使われていた工作機械、船舶資材、建造船の歴史写真などを展示する博物館となっている。  館内をみると、1834年に長崎鎔鉄所建設時の岸壁工事に使用された潜水用具「泳気鐘」, 日本最古の工作機械といわれる「竪削盤」(1857)、日本最初の国産陸用蒸気タービン(1908)、長崎造船所工場の支柱に使用した「鋳鉄柱」などが展示されている。また、長崎造船所の歴史を語る写真も豊富で、1870年頃の長崎製鉄所の写真1885年頃の飽ノ浦造機工場、立神第一ドックの模様、最初の鉄製汽船(1887)、1920年代からの「常陸丸」、船艦「日向」、戦艦「武蔵」など往時の姿が偲ばれる。  長崎造船所の歴史をみると、1896年には第一ドック完成、1898年木型場建設、1903年には第二、第三船台完成、1907年、船型試験水槽竣工、1909年には大型クレーン設置、と近代造船所としての陣容を整えていっている。そして、1887年「夕霧丸」(最初の鉄製汽船)、1898年「常陸丸」(大型貨客船)、1908年「天洋丸」(本格的タービン船)、1915年には巡洋戦艦「霧島」の建造に成功している。このように、長崎造船所などを通して、日本の造船技術は飛躍的向上し、僅か50年の間に世界の造船大国の一つまでに成長していったことがわかる。 (参考)(https://igsforum.com/visit-nagasaki-zosen-m-jj/)長崎造船所史料館訪問記 ++++++++++++++ ♣ 三菱重工業下関造船所史料館   (https://www.mhi.com/jp/company/aboutmhi/museum/shimonoseki)山口県下関市彦島江の浦町六丁目16番1号  Tel.083-266-2111 → この史料館は下関造船所の創業80年を記念して設立されたもの。下関造船所のルーツ、船の変遷、船の製造過程など時代とともに変遷する建造船の歴史ついて紹介している。 3つのコーナーがあり、「下関造船所のルーツ」、「下関造船所 船の変遷」、「船ができるまで」など、時代とともに変遷する建造船の歴史や、船の特長などについて展示している。 +++++++++++++++ ♣ ヴェルニー記念館(史跡)(横須賀)  (https://www.cocoyoko.net/spot/verny.html 横須賀市東逸見町1-1 Tel. 046-824-1800 → 記念館は、日本産業近代化の起点ともいえる横須賀製鉄所をつくりあげたフランス人技師ヴェルニーの功績と横須賀製鉄所の意義を後世に伝えるために建てられた施設。現在は米海軍横須賀基地となっている横須賀製鉄所の跡地を対岸に望むヴェルニー公園の一角に位置している。建物の外観は、ヴェルニーの故郷ブルターニュ地方の住宅の特徴を取り入れている。横浜製鉄所の記念品と共に、当時使われた造船大型ハンマーなども展示。 (参考)https://igsforum.com/visit-yokosuka-ironworks-j/ 横須賀造船所跡訪問記 ++++++++++++++++ ♣ 戸田造船郷土資料博物館(史跡)  (https://www.city.numazu.shizuoka.jp/kurashi/shisetsu/zosen/)静岡県沼津市戸田2710-1  Tel.0558-94-2384 → 幕末、ロシア船ディアナ号が座礁した際に、代船として日本初の西洋型帆船ヘダ号を建造した歴史を記念する史料館。その後、これに関わった船大工が各地でその技術を伝え、日本の近代造船の建造に大きく貢献したとされる。このヘダ号は「君沢型」と呼ばれ、江戸石川島で4隻の君沢型船が建造され、戸田から船大工が派遣されている。また、長州藩(山口県)や田原藩(愛知県)、江戸や大阪へ招かれた船大工たちが、西洋式造船技術を広めていったと伝えられる。現在、駿河湾深海生物館ともなっている。 ************ (造船、重工業の発展を示す博物館) ♣ 三菱みなとみらい技術館 (三菱重工) (https://www.mhi.com/jp/company/aboutmhi/museum/minatomirai)   横浜市西区みなとみらい三丁目3番1号  Tel.045-200-7351  → 三菱重工が、横浜のみなとみらい地区に技術センターを作ったことから、この一部として設立したのが「三菱みなとみらい技術館」。三菱の造船、自動車、鉄道、海洋、航空宇宙などの事業全体を紹介する博物館である。技術館では、三菱重工が現在技術開発を進めている事業、環境エネルギー、深海開発、航空機、宇宙装置・ロケット、交通システムなどを実物、模型、シミュレーションなどで総合的体系的に展示している。三菱重⼯の足跡と現代の技術挑戦をみることができる。なかでも、開発中の国産ジェット旅客機MRJの機体模型、H2ロケットエンジン、有人潜水船「しんかい6500」実物分解展示などは圧巻である。 (参考)https://igsforum.com/mitsubishi-minato-m-jj/ 三菱みなとみらい技術館訪問記 ++++++++++++++ … Continue reading

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♣ 製鉄技術と金属鉱山開発の博物館・詳細(B1) 「たたら製鉄と反射炉」

♣ 製鉄技術と金属加工の博物館(鉄と金属のものづくり)                            日本の製造業の根幹となった製鉄のあゆみ、近代産業形成期に大きな役割を果たした鉱山開発、現代の“ものづくり”の基礎となった鍛冶技術、金属加工の歴史発展を示す博物館を紹介。特に、伝来の鍛冶、鋳物産業、金属加工の技術展開を取り上げる。  また、日本の製造業の根幹となる製鉄業の成り立ちと現代のものづくりの基本となる鉄加工技術を示す博物館を紹介する。 (たたら製鉄と鍛冶技術の博物館) ・和鋼博物館  (http://www.wakou-museum.gr.jp/)    島根県安来市安来町1058  Tel. 0854-23-2500                        和鋼博物館は、日本の伝統的製鉄法「たたら」に関する日本唯一の総合博物館。1993年、「鉄の道文化圏」(安来市・雲南市・奥出雲町)内の文化館のひとつとして誕生している。元々は、日立製作所安来工場(現 日立金属)付属の展示施設であったが、「たたら製鉄」関連の文化遺産保持のため、新たな構想のもと安来市の博物館として開館したもの。館内は、種々の和鋼の製鉄用具の展示や映像、体験コーナーを通して、たたら製鉄とその歴史・流通、さらに各種匠技を紹介するとともに、企画展や講演会、様々なイベントを開催して“たたら”の知識普及に努めている。また、従来からの和鋼・たたらの調査・研究に関する事業を引継ぎ、発展させることも目指しているという。 +++++++++++++++++ ・菅谷たたら山内-鉄の歴史博物館・伝承館(鉄の歴史村)  (http://www.tetsunorekishimura.or.jp/sdk)  島根県雲南市吉田町吉田892番地1  Tel.0854-74-0311 → 「鉄の歴史博物館」は、日本古来のたたら製鉄の歴史や技術を解説している博物館である。ここでは「たたら」とその技法、そして鉄山経営と鍛冶集団の様子が詳しく紹介されている。博物館のある吉田地域で古くから原始的な「野だたら」による鉄づくりが行われていたが、江戸時代、新しい「永代だたら」がはじまり「高殿」という溶解炉が築かれており、「村下」(むらげ)と呼ばれる職人がこの作業を指揮したことが展示では記されている。また、鍛冶集団というテーマの展示では、鉄山師による「たたら製鉄」の記録や生活、鍛冶集団の活躍が紹介されていて、当時の製鉄のありようが示されている。 また、「菅谷たたら山内‐生活伝承館」では、吉田地区の繁栄を象徴する産業遺産「高殿」を軸に、たたら職人の技術と生活が紹介されている。(島根県雲南市吉田町吉田892番地1 http://www.tetsunorekishimura.or.jp/sdk) +++++++++++++ ・大板山たたら製鉄遺跡)  (https://www.hagishi.com/search/detail.php?d=1100190)                                     萩市大字紫福10257-11  Tel.0838-25-3380 江戸時代末期、萩藩の洋式造船を支援したたたら製鉄の遺跡。発掘調査によって製鉄炉である高殿と呼ばれる施設などの生産遺構が残っていることが確認されている。元小屋・高殿・砂鉄掛取場・鉄池・鍛冶屋などの遺構がよく保存されており、建物跡などの遺構が露出した形で整備されている。(国指定史跡) ++++++++++ ・国友鉄砲ミュージアム(史跡)  (https://kunitomo-teppo.jp/)                        滋賀長浜市国友町職0749-62-1250  Tel.0749-62-1250     この博物館では、戦国から江戸時代にかけて鉄砲の生産地として栄えた国友の歴史に関する資料を数多く展示する。館内には、国友鍛冶の仕事場の様子や国友鉄砲の製作工程が映像や実物があり、江戸時代、鉄砲鍛冶として活躍し「反射望遠鏡」も製作した「国友一貫齋」の展示もみえる。日本に鉄砲が伝来し普及した歴史や開発された火縄銃の構造や製作技術を知る上で貴重な施設といってよいだろう。ちなみに、外国からの来訪者も多く、国友の歴史への関心と共に、手になじみやすく細工が良い、デザインが優れ、命中率が高いなど、国友火縄銃への評価も高いようだ。(参考)国友鉄砲ミュージアムと国友一貫斎 (https://igsforum.com/2024/04/08/kunitomo-teppo-m-jj/) ・種子島鉄砲博物館(史跡)(鹿児島県)  (https://www.kagobura.net/shop/shop.shtml?s=3519)                                   鹿児児島島県県西之表市市西之表  Tel.0997-23-3215   この博物館では、種子島の歴史・文化・自然などを広く紹介している。外観では、南蛮船を イメージした外観が目を引くが、1543年種子島に伝わったポルトガル銃や国産第1号の火縄銃、さらに国内外の旧式銃約100挺が展示されており、火縄銃の歴史や世界の鉄砲の様子が見学できまる ++++++++ ・刀剣博物館(刀剣保存協会)  (https://www.touken.or.jp/museum/ 東京都墨田区横網1-12-9  Tel.03-6284-1000 → 日本の刀鍛冶の技術を伝える貴重な刀剣類、刀装を所蔵公開。「たたら」と玉鋼の製作、作刀工程についても解説。日本刀は日本人の豊かな感性により武器が美術工芸品にまで昇華されたといわれる文化財で、千年を越えて大切に保存され、歴史的・文化的にもその果たした役割が大きい。博物館では、刀剣類、刀装、刀装具、甲胃、 金工賞料、古伝書等を多数所蔵し、その中には国の指定・認定物件も数多く含まれている。 … Continue reading

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